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LIXILが「採用より育成」を重視する理由──「顧客と業務」の理解が必須なDXの最新潮流

【後編】株式会社LIXIL 商品コンテンツマネジメント統括部 UX Strategy & Design 部長 高橋マイク氏

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既存部署をUX組織に変革できた理由

藤井:組織の課題についてもお聞きしたいです。もともとUX Strategy & Design部は、既存の部署の役割を一新する形で設立されたと前編でお伺いしました。ということは、以前は別の業務を担当していたメンバーが、UXデザインに従事しているわけですよね。その変化に部署のメンバーは戸惑っていないのでしょうか。

高橋:UXデザインは、まだ一般的に定着している業務ではないので、多少の戸惑いや困惑はあったと思います。ただ、一方で「UXデザイン」という言葉には、どこか先進的でキラキラしたイメージもありますよね。そのせいもあってか、多くのメンバーかなり好意的、かつ前向きにキャリアチェンジしてくれた印象があります。

高橋マイク重貴
株式会社LIXIL 商品コンテンツマネジメント統括部 UX Strategy & Design 部長 高橋マイク氏

藤井:「そもそも顧客視点とは」「なぜ顧客体験が重要なのか」といった基礎的な理解で齟齬を来すことはないですか。

高橋:それもあまり感じませんね。「UX」や「顧客体験」といった言葉にするからやや敷居が高く感じられますが、要するに「お客様の立場に立って考えましょう」ということですから。そう伝えれば多くのメンバーは理解してくれますし、そもそもすべての仕事が一変してしまうわけではありません。戦略の策定や顧客体験の構築には多少の経験やノウハウが必要ですが、現場での運用や作業には従来と変わらないものも多いです。

藤井:たしかに、先日、UX Strategy & Design部の皆さんを中心にUXに関する講演をさせてもらいましたが、2年ほど前に同じ場所で同様の講演をしたときとは熱量の差を感じました。会場からの質問も核心を突くものが多かった印象です。

高橋:世の中の流れとしても、UXの重要性に注目が集まっていますし、メンバーも自分ごととして藤井さんのお話を聞いていましたね。だから、既存のメンバーを転身させることに、それほど慎重にならなくてもよいのかなと。個別の知識については、時間をかければ実務のなかでキャッチアップできるものだと思いますので。

藤井:ところで、外部からUXデザイナーを採用したケースはあるんでしょうか。

高橋:中途採用は行っていないですね。

藤井:えっ、それは意外ですね。何か意図はあったんでしょうか。

高橋:実はそれほど意図はなく、「既存の人材を活用してほしい」という会社の意向があったので、それに従ったというのが当初の理由でした。UXデザイナーは希少ですし、採用にも苦労するのが目に見えていたので、中途採用はいずれ時期が来ればいいかな、という思惑でした。

 でも、実際に人材を育成していくなかで「中途採用は必要ないな」と思うようになりました。というのも、UXデザインは、教科書的なスキルよりも、顧客や業務を理解していることのほうが重要だからです。いくら他社で実績のあるUXデザイナーでもLIXILの顧客や業務のことは外からではわかりづらいですよね。

 しかも、LIXILが手がける住宅設備は商流やビジネスモデルがややユニークで、一般的なBtoBのビジネスとも異なります。そう考えたときに、既存の人材をUXデザイナーに育成するのと、外部のUXデザイナーにLIXILの知識をインストールするのでは、前者のほうが圧倒的に効率的だと考えるようになりました。

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BtoBでは顧客と業務の理解が鍵を握る

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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