「2024年問題」解決の鍵を握るのは荷主企業
真畑:ドライバー不足は構造的な課題をはらんでおり、なかなかすぐに解決できないように思います。荷主企業・物流会社の対応は進んでいるのでしょうか。
小野塚:「2024年問題」によって、2024年は14%の物が運べなくなると政府は試算していました。しかし現状、周囲を見渡してもそのような状況に陥っている事業者はいません。企業努力によって効率化が進んだ結果、かろうじてまだ荷物を運べているのだと思います。一方で先にお伝えしたとおり、人材不足をはじめ状況は悪化します。これも政府の試算ですが、2030年時点で3割以上の荷物が運べなくなると見込まれています。
ここでポイントになるのが、物流会社ではなく荷主企業です。物流会社から「効率的な輸送ルートを設計しましょう」「こうすると荷待ち時間を減らせます」といった提案をすることも重要ですが、それを受けて意思決定するのは荷主企業です。最近では「物流費高騰のため価格改定します」というニュースも目にしますが、それを続けてしまうと会社は競争力を失います。荷待ちの時間を減らす、積載率を高める、トラックではなく船で運べるようにするといった工夫を、荷主企業は今後も続ける必要があります。
真畑:御社のご支援の事例も交えながら、日本のサプライチェーン・物流領域の構造的課題についてお話しいただけますか。
小野塚:総じて「荷主企業に課題がある」というのが本質的なポイントです。そもそもなぜ非効率な状況が続いているかというと、多くの日本企業において、調達、生産から物流、販売に至るプロセス全体を最適化しようという意思決定力が欧米企業と比べて弱いからです。
1つ例を挙げると、一般的に製造業の会社では製造部門や開発部門の出身者が社長になります。それが、結果として会社全体の最適化を阻む要因になっているのです。
ジャストインタイム方式を採用しているメーカーがあるとします。1日3便のトラックを出して工場間を輸送し、工場内の在庫をなるべく減らすことで、生産効率を高めているといいます。しかし1日3便といっても、積載率3割で3回運んでいるとするとどうでしょう。それであれば、輸送は1日に1便でいいですよね。在庫を置くためのスペースの確保などのコストは増えるかもしれませんが、輸送費が圧縮され、利益も増えるはずです。しかし生産部門が「我々はジャストインタイムを強みに成長してきた会社だ」と言うと、物流部門は了承せざるを得ないのが実情です。
物流の担当部長のミッションが物流費を下げることではなく、工場から言われたとおりに出荷したり、営業から言われたとおりに納品したりすることになってしまい、結果として物流費が高止まりしてしまっている。私たちがご支援した企業でも、こうした例はありましたね。