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コーセーと森永製菓の協業事例に学ぶ、大企業が新規事業の壁を突破する方法

Startup JAPAN 2024 秋 セミナーレポート

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予算配分や人員配置の仕組みづくりで事業化につなげる

 コーセーでは2010年以降、名前を変えつつ継続的に新規事業創設プログラムを実施しており、累計参加者は300名近くにも上る。しかし、「プログラム実施初期は、研修の一環として始まったこともあり、本格的な事業の立ち上げにはつながらなかった」と針金氏は振り返る。針金氏が同プログラムの責任者に就任した時も、前回の最終審査を通過した案件について、人員や予算の割り当てすら決まっていないような状況だった。これを受けて土井氏は、「新規事業を創出するための制度はあっても、人材育成を目的としたコンテストに留まり、実際の事業化に至らないケースは少なくない」と頷く。

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 では、実際の事業創出につなげるためには、どうすればよいのか。針金氏は、新規事業創設プログラムにおける支援内容と支援期間から、人員配置、予算配分といった項目までを一から設計。採択された案件が宙に浮いたままになることなく、事業の体裁を整えられるような道筋を作り上げた。

 ただ、案件を事業化する仕組みを作ったとはいえ、「事業化してからは案件の起案者にやり方を模索してもらっているのが現状だ」という針金氏。事業化プロセスにおける課題はケースバイケースであり、どうしても個別対応が必要になるためだ。一方、起案者となった菅井氏は、「どうすべきか決まっていない場面に出くわした時は、自らの判断で推し進める必要があった」と認めつつも、「会社として新規事業をサポートする体制があること自体が重要だった」と語る。

 菅井氏がこのように話すのは、自らの案件の事業化にあたって、針金氏の伴走支援が大きな転機となったためだ。そもそも菅井氏が案件を企画したきっかけは、会社が美容業界で勝ち抜くためにインナービューティにも領域を広げるべきだと感じたこと、そして自らのプロテインマイスターの認定を活かせると考えたことだった。つまり、会社の課題解決や自分のノウハウに焦点を当てた企画だったのだ。

 しかし針金氏から、「大切なのは会社でも社員でもなく、顧客のためになるかどうか」だという指摘を受けたことで企画の視点を転換し、プロテインに関する顧客課題のヒアリングに着手することに。100名を超える一般人にアンケートを実施する中で、「身体にいいのはわかっているが面倒くさい」「商品の選択肢が多過ぎて選べない」といった、当初は想定していなかった顧客課題を見出し、商品のコンセプトを決定するに至った。

 針金氏が案件の事業化に至る過程で「顧客視点」にこだわるのは、「顧客こそが、会社にとっての正解だ」と考えているからだという。大企業における新規事業創出の壁として、決裁フローが長い組織構造が取り上げられることが多いが、課長は部長を、部長は取締役を、取締役は社長を、社長は顧客を見ていることを鑑みれば、会社が逆らえない唯一の存在は顧客であることがわかる。つまり、案件を「上長や会社にいかに納得してもらうか」ではなく、「顧客にいかに価値を提供できるか」という視点で吟味し、洗練させることが、事業化を実現する一番の近道だというわけだ。

 この例を受けて土井氏は、「新規事業を提案しても、顧客視点が欠けているがゆえに、経営層を説得できず、予算や人員をつけてもらえないことは少なくない」と補足した上で、「菅井氏は、自ら顧客のコミュニティを作り、机上ではなく現場で商品検証を繰り返したからこそ、事業化における1つの壁を突破できた」と分析した。

株式会社コーセー 経営企画部 経営戦略室 事業開発課 菅井蔵氏
株式会社コーセー 経営企画部 経営戦略室 事業開発課 菅井蔵氏

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山田 奈緒美(ヤマダ ナオミ)

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