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「新規事業提案制度」事務局運営のリアル

ENEOSが目指す“価値創出”──「Challenge X」事務局に聞く、挑戦者を支援しつづける工夫

ゲスト:ENEOS 大間知孝博氏、堀尾聡裕氏(前編)

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社員が新規事業の支援者として盛り上げる「オーディエンス賞」

イノベーション:Challenge Xは、選考通過後の業務時間活用が潤沢だと感じます。書類選考通過で業務時間の20%、採択で業務時間の100%という制度設計は興味深いです。この仕組みの背景と実際の運用について詳しく伺えますか?

堀尾:この仕組みは挑戦者が本業の合間に活動する負荷を軽減し、事業化に集中してもらう意図があります。これを担保するために、提案者は所属部署から異動して、専任で取り組む体制となります。書類選考で約20件に絞り、中間プレゼンで7件程度を選抜し、最終的に2件程度を採択するという選考プロセスです。

イノベーション:グループ会社の参加は、どのように設計されているのでしょうか?

大間知:Challenge XはENEOS単体にとどまらず、グループ各社にも参加を呼びかけています。最初に各社に参加の意向を確認し、希望されたところに参加していただく形です。全グループ会社に強制するのではなく、新規事業に関心を持ち、参加意思のある企業が主体的に制度に加わる形をとっています。それぞれの会社でも独自の新規事業プログラムを運営しているケースもありますので、無理に統一するのではなく、グループ全体で挑戦の文化を醸成したいという思いで取り組んでいます。

イノベーション:グループ会社の参加意思を尊重されているのは興味深いですね。私の経験では、グループ会社への展開で苦労したケースがよくあります。たとえば、資本関係の違いによって参加できる・できないの線引きに悩んだり、グループ全体への強制的な展開で反発が生じたりするケースもありました。自主性を重んじた形での展開は共感できます。

 ちなみに、Challenge Xではオーディエンス賞も導入されていますが、そこにはどのような狙いがあるのでしょうか。

堀尾:オーディエンス賞を設けている意図は、選考会を見る多くの社員に新規事業に関心を持ってもらい、“自分ごと”として考えてもらうことです。風土改革的な意味合いも持たせ、投票してもらうことで制度への参加意識を高めています。

大間知:挑戦者を称えることと、投票する側のエンゲージメントを高めることも狙いです。審査員による選考は評価項目が明確で総合得点を細かく見ていくのに対し、オーディエンス賞は瞬間的な印象や、同じ部署の仲間への応援といった側面もあります。こうした形で幅広い社員を巻き込み、全体で盛り上げる効果があります。

ENEOSホールディングス株式会社 未来事業推進部 副部長 大間知孝博氏
ENEOSホールディングス株式会社 未来事業推進部 副部長 大間知孝博氏

イノベーション:私も過去に所属した会社のピッチコンテストでオーディエンス賞を実施した経験がありますが、オーディエンス賞と事業化の相関関係は悩むことが多かったです。「人気のある案件」と「事業性の高い案件」が必ずしも一致するとは限りません。他社でも同様の悩みを抱えているところが少なくありませんが、サポート意思との連動は非常に賢い仕組みですね。

堀尾:私たちもその点を意識して、2024年からオーディエンス賞の投票の仕方を変更しました。単なる人気投票ではなく、「どの提案に対してどのようなサポートをしたいか」という観点で投票してもらうようにしたのです。これにより、法務バックグラウンドの人は法務的なサポート、事業計画では数字に強い人が協力するなど、具体的な支援の可能性を引き出せるようになりました。

大間知:この変更にはとても重要な意図があります。新規事業創出において、提案者一人だけですべてをやるのは現実的ではありません。提案者も必ずしも“事業化のプロ”とは限りません。そこで、組織の中の様々な専門性を早い段階から手挙げ制で集め、チームとして事業化を進められる仕組みを作ったのです。

イノベーション:オーディエンス賞を人気投票ではなく、支援者とのマッチングにつなげる工夫は、とても参考になります。Challenge Xでは挑戦する側だけでなく、支援する側の巻き込みも工夫されていることがよくわかりました。私も以前携わった制度では支援者の負担が大きな課題でしたが、こうした形で適切に巻き込む仕組みは、ぜひ私も学ばせていただきたいと思います。

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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