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メンバーレベルが大企業を動かすには──3つのケースから見るイノベーションのポイント

第3回

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大企業を中から動かすために「すべきことを続けて機会を待つ」

 「大企業を動かすためには、何が必要だと思いますか? あなたはなぜそれができたのでしょうか?」

 ある企業から弊社のシリコンバレーオフィスへ駐在していた方の答えは、「会社の未来のためにすべきだと思ったことをやり続けながら、待つ」でした。その方は最新の業界情報や注目を集めているスタートアップを見つけては調べ上げ、週1回実施する社内有志へのレポート配信のほか、その内容を説明するウェブセミナーを米国から週4回実施し続けました。折しもそのころ経営層が交代し、この取り組みに反応した経営陣が現れました。彼の草の根的取り組みが経営トップの目指す全社のあるべき姿と呼応したことから、全役員を巻き込んだ企業風土変革活動につながったのです。

 「どうして実現できたのですか?」と聞くと、「いや……私一人でやったわけでもないですし、時流に乗ったというか、ただ運がよかったですね……」と謙遜していました。「でも、私も、社内で新しいことに取り組んでいった他の社員もみんな、自分自身が会社のためにすべきだと思ったことをやり続けて準備をしていました」と話すのです。

大企業を中から動かすために「協力関係を築くための時間をもつ」

 先ほどの例とは別の企業で、自ら発案した新規事業を推進している方は「時間! とにかく時間が必要です!」と答えてくれました。

 その新規事業は、既存事業が持つ設備を活用するため、既存事業部門の協力を得るための時間がとにかく欲しいのだそうです。全社のビジネスコンテストで、社長もいる場にて採択されたものの、それでも日々忙しい既存事業部門の業務の中に組み込んでもらうためには根気強くお願いしなければならない、協力を仰ぐにも何回も足を運ばないと進まないのだと語っていました。既存事業部門にとっては、日々の生産性を厳しく管理されているところに追加で新しい業務を行うのは難しいでしょう。同じ企業の社員として、そのような心情もよく理解できるからこそ、応援してもらえる・協力してもらえるような関係性になるための時間が必要だということでした。

大企業を中から動かすために「外部の力を利用する」

 「うちは社内から何を言っても動かないくせに、他社がもうやっていると聞くと一気に動く」「同業種の企業が始めた取り組みを知ると、『あのお堅い会社が!?』と衝撃を受けて、新しいことを始める」という言葉を耳にします。

 業界内外の他企業の取り組みを知ることは時に大きな意思決定を促します。とはいえ、イノベーション活動として実際に他社が何を行っているかを知る機会は限られています。ニュースになっているような取り組みについて目にすることはあっても、それはあくまで外部向けに整えられた情報でしょう。

 その意味で、弊社の持つファンドへ投資しているLP企業同士は横のつながりがあるという点で珍しい環境にいると感じます。弊社のシリコンバレーオフィスではLP企業から駐在員を受け入れており、様々な業界の方が弊社社員と机を並べています。また、日本オフィスでも定期的にLP企業のイノベーション推進者や新規事業担当者の横のつながりを創出する取り組みを行っています。同じファンドに出資し、本気で社内の変革活動に取り組んでいる企業の担当者同士での情報交換や、あの会社はこんなに大きな取り組みをしているのかという気づき、はたまた事業立ち上げの失敗経験の共有が、それぞれの企業で進めるイノベーション活動の後押しになってほしいと願っています。

 また、弊社ではLP企業合同にて、役員層以上のみを対象とした1週間のワークショップをシリコンバレーで実施しています。普段の環境以外を体験することや、他社の取り組みを知ることで大きく意識が変わり、自部門でも新しいことに挑戦したいと精力的に活動を始める方も少なくありません。このような機会を活用し、経営陣に変化を促すことも有効でしょう。

 経営陣の中には「イノベーション」と聞いて身構える方や、そんなものは自社には必要ない・有効でないと考える方もいらっしゃるでしょう。そのような方はこれまでの経験に裏打ちされた成功パターンを持っており、なんとなく賛同する方よりもむしろ、自分なりの強い信条に則って頑張っている方であるとも言えます。

 そんな方がイノベーションの価値を自分の言葉で腹落ちした時には、非常に強力な推進者となってくれます。実際に、我々はそのような方を数多く見てきました。自分の会社が少しずつでもよくなってほしいと願っているのはどんな立場の方でも同じでしょう。その大目的に立ち返れば、協力を仰ぐ道も拓けるのではないでしょうか。

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すべてを解決する銀の弾丸はなく結局は「直接突撃」

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この記事の著者

三吉 香留菜(ミヨシ カルナ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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