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“趣味”が新規事業に──NTTドコモ発新規事業 e-Craft額田氏に聞く、事業成長のポイント

ゲスト:e-Craft 額田一利氏

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“趣味の延長”がNTTドコモの新規事業に

──はじめに、額田さんのこれまでのキャリアを教えていただけますか。

額田一利氏(以下、額田):私はNTTドコモに入社後、研究所に所属し、基地局におけるエネルギー最適化研究などを行っていました。その後、社内の友人たちと立ち上げた「embot(エムボット)」の事業をカーブアウトさせ、現在はe-Craftの代表を務めています。

──「embot」とはどのような事業ですか。

額田:一言でいえば、プログラミング教育サービスです。ただ、プログラミング言語を学んでスーパープログラマーになってもらうのではなく、プログラミングを身近に感じてもらうことに主眼を置いているのが大きな特徴です。ハードウェアにあたる段ボールロボットと、ソフトウェアであるアプリケーションをつないで遊べるプロダクトで、元々は小中学生を主な対象としていました。

 最近ではプログラミングや電子工作でアイデアを具現化するためのツールとして使用されることが多くなり、ユーザーの年齢層が広がりつつあります。たとえば高校生が段ボールロボットの代わりに基盤やモーター、センサーなどをつないで作品を作っていたり、企業でもエンジニア未経験の人材がプロダクトのイメージを形にするために「embot」を使用していたりします。

「embot+(エムボットプラス)スターターキット」と段ボールロボット
「embot+(エムボットプラス)スターターキット」と段ボールロボット

──「embot」を立ち上げた経緯について教えてください。

額田:ユーザーからのフィードバックに時間がかかる研究分野以外のことをやりたいと思うようになったのがきっかけです。100年後に役に立つことより、目の前の人が喜ぶことがしたいと思い、趣味の延長で社内の友人たちとプロダクト作りを始めました。

 最初に作ったのは人の体調を可視化するパソコン上のアプリケーションでしたが、その後感情を伝えるロボットに切り替えました。たとえば、「ラーメンが美味しかった」というメールの文面に合わせて喜んだ仕草をしてくれるようなロボットで、「Emotional Robot」を略して「EMBOT」と名付けました。

 このロボットは評判がよく、2014年に開催されたWeb開発コンテスト「MashupAwards10」では「ニフティ賞」を受賞したのですが、表彰式で同時開催イベントのスポンサーにNTTドコモが入っていたために社員に知られてしまって。どうせなら自分たちから直接上層部に話して取り組みを加速させようと思い、執行役員にプレゼンしに行ったところ、「面白いな、検討する」という返答を得ました。

 ところが、その後しばらく音沙汰はなし。「仕方がない。自分たちだけでやろう」と開き直り、プログラミング教育サービス「embot」にピボットしてユーザーを増やしていると、ある日突然、事業開発を行う部署へ異動になったんです。当初はギターのコードを判定できる演奏者支援サービスを担当していたのですが、しばらくして「embotを事業化してくれないか」と上司に声をかけられました。

 当時部を統括していたのは、私がプレゼンした執行役員です。「embot」を一緒にやっていたメンバーも同時期に同じ部署へ異動したことを考えると、最初からそのような魂胆だったのかもしれません。世間でもちょうどプログラミング教育必修化に注目が集まり始めていたので、「embot」に目をつけたのでしょう。

 私は当初、事業化に悩んでいました。楽しい趣味を取られたくなかったですし、マネタイズも難しいのではないかと思っていました。ところがNTTドコモは、メンバーである私たち一人ひとりとライセンス契約を結ぶと言ってくれ、かつ、プログラミング教育は2020年度から小学校で必修化するという情報もニュースになり始めました。それならやってみようと重い腰を上げました。

 いずれにせよ「embot」はビジネスありきではなく、趣味で始めてたまたまビジネスがともなうようになったものなのです。

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この記事の著者

山田 奈緒美(ヤマダ ナオミ)

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