新たな“学び”が教育とHRの垣根をなくす
次に登壇した山本将裕氏は、2024年にNTTドコモからスピンアウトしたスタートアップ、RePlayceの代表取締役だ。

山本氏は、教育業界のイノベーションを目指す。日本の子どもは、学力こそ世界トップレベルだが、自律学習に対する自信はOECD加盟国中最下位。昨今は、このような状況を生み出した日本の教育のあり方が問われつつあり、通信制など新たな枠組みの学校に通う子どもが増加している他、大学受験でもAO入試や総合型選抜を採用する割合が50%を超えている。
この波に乗り、RePlayceは2つの新たな教育の形を提案する。1つ目は、社会や仕事に対する学びを深める放課後のオンライン部活動「はたらく部」。もう1つの「HR高等学院」は、探究型の学びを深めながら高校卒業資格を取得できる、通信制高校サポート校だ。社会への関心を深める教育コンテンツと、多様なキャリアで実績を残してきた社会人コーチ・講師という双方に共通のアセットを、多角的な視点で生かしてマネタイズしている。
大企業の新規事業でIPOを目指すという山本氏。その先に見据えるのは、学校だけでなく企業も教育に関わり、「教育とHRの垣根をなくす」というビジョンだ。「それによって、子どもの学力も自信も世界トップになれば、日本は絶対に元気になる」と山本氏は断言した。
この発表を受けて及部氏は、総合型選抜・AO入試の市場における競合優位性を尋ねた。山本氏は、塾ではなく学校を運営していることの他に、学びをサポートするのが学生ではなく社会人であること、コーチ・講師の育成方法を型化していることを差別化ポイントとして強調した。

AIアバターで一生分の孤独を埋め尽くす
「皆さんはこれからの人生、あと何パーセントつながりが増えると思いますか」こう切り出したのは、最後の登壇者である、NTTドコモ株式会社発新規事業「MetaMe」の吉田直政氏だ。

日本は先進国の中で最も「社会的孤立」が深まっていると言われている。メタバースの登場がその傾向を和らげるかと思われたが、バーチャル空間に人がいないという「過疎バース問題」が浮き彫りになり、リアル空間と同様に「つながれない痛み」が表出しているのが現状だ。
そこで吉田氏が紹介したのが、“一生分の孤独を埋め尽くす”メタコミュニケーションサービス「MetaMe」だ。人間と同様に“共感対話”が可能なAIアバターを10万人以上存在させることで、「話しかけられる人が必ずいるという世界」を実現。β版でも2年間で19万人を超える登録者と29のパートナーを獲得したという。
今後は企業・自治体向けのメタバース空間作りから始め、ある程度ユーザーが集まった段階でクリエイターやユーザーを巻き込み、オープンなプラットフォーム展開を目指すという吉田氏。そのプロセスでは、NTTドコモの有するdアカウントのデータベースや5G/6Gの通信網、全国の営業チャネルが強力なドライバーとなる。
プレゼン終了後、株式会社ユニッジ 代表取締役Co-CEOの土成実穂氏は、2年間で19万人以上の登録者を集められた理由を尋ねた。それに対し吉田氏は、「AIアバターとの対話の他、AIを絡めた連続的なイベント設計によって最小コストで人を集められる仕組みが整っている」と回答した。
