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キリンHD、日本製鉄、ANAHDらの社内起業家が示す大企業発の新規事業の“可能性”

第二回 日本新規事業大賞レポート

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スキャナー技術の応用でリチウムイオン電池火災を防ぐ

 次にリコーグループ発新規事業、廃棄物分別特化AIエンジン「Raptor VISION」を代表して田畑登氏が登壇した。

株式会社PFU 田畑登氏
株式会社PFU 田畑登氏

 田畑氏が提起した課題は、リチウムイオン電池の誤廃棄による廃棄物処理場の火災だ。近年はリチウムイオン電池を内蔵する製品が多様化し、外からは内蔵されているか判断できない上、廃棄物処理場では人の目で選別を行っているため、誤廃棄を完全に防ぐことは不可能に近い。その結果、廃棄物処理場に数億円もの被害が及んでいる。

 そこで田畑氏が提示したのが、「Raptor VISION」だ。画像認識AIをX線画像と組み合わせ、リチウムイオン電池を検知して除去するもので、リコーグループPFUが誇るグローバルシェアNo. 1イメージスキャナーの画像処理技術が生かされている。この画像認識AIをデバイスメーカーと連携して最終製品に組み込み、商社とのコネクションを活用して市場へ迅速にリーチするという。

 将来的には、産業廃棄物の選別・検知へ適用範囲を拡大させたいと田畑氏。過酷な廃棄物処理現場を救済するだけでなく、その先で再資源化のサイクルを加速させることを見据えている。

 この発表を受け、経済産業省 経済産業政策局 競争環境整備室長の池田陽子氏は、デバイスメーカーや商社との連携を含めた市場への投入戦略を尋ねた。田畑氏は、「ビンの自動選別AIエンジンローンチ時に協業ネットワークを構築した」と言及した上で、「顧客のイニシャルコストを抑えるため、既存設備に後付けできる製品設計やサブスクリプション型のサービス形態を採用している」と回答した。

経済産業省 経済産業政策局 競争環境整備室長 池田陽子氏
経済産業省 経済産業政策局 競争環境整備室長 池田陽子氏

社員の活躍の場を増やすスキルシェアサービス

 自社の課題からヒントを得て事業化に至るケースもある。ANAホールディングス株式会社発新規事業「ANA Study Fly」がその一例だ。

 20年間客室乗務員として働いてきた渡海朝子氏は、「社会を変えたいと思ったことなど、一度もなかった」と告白する。しかし新型コロナウイルス流行により、自身を含む社員たちが“空”という活躍の場を失ったことを機に、“陸”でもできることとして社員のスキルシェアサービスを思いついたという。

ANAホールディングス株式会社 渡海朝子氏
ANAホールディングス株式会社 渡海朝子氏

 当初toCサービスとしてスタートした本事業は、講座数190、講師数200名を数えるまでに拡大した。その後toBサービスも開始し、2024年には売上の50%以上を占めるように。語学スキルとホスピタリティを生かしてコミュニティサポートやハイエンド通訳へとサービスの幅を広げているという。

 「私たちの最も大切な資産は人だと気づいた」と渡海氏。「人材を人財に」という想いを胸に、引き続きエッセンシャルワーカーの活躍できる場を作っていくことを目指している。

 この発表を受けて、株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEOの麻生要一氏は、どのような企業のどのような部署にニーズがあるのか」と尋ねた。渡海氏は、講座が多岐にわたっているため、様々な企業や部署から問い合わせがあると回答。営業部門からはコミュニケーション活性化、人材開発部門からはCSマインド向上などの要望があるという。

株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO 麻生要一氏
株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO 麻生要一氏

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山田 奈緒美(ヤマダ ナオミ)

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