大企業発新規事業を“7つの観点”でチェックする
企業の可能性を広げる事業を立ち上げ、それによって企業変革を成し遂げている新規事業に贈られる「日本新規事業大賞」。「Startup JAPAN」内で最終審査に残った事業の代表者によるプレゼンテーションが行われ、審査員による選考を通じて大賞が決定される。さらに今回は、会場の参加者が選ぶオーディエンス賞と審査員ごとに選ぶ審査員特別賞が新設され、多様な観点からの評価が試みられた。
最終審査登壇者
- あおもり創生パートナーズ株式会社発 新規事業/耕畜連携もみ殻事業/及川大佑氏
- 日本製鉄株式会社発 新規事業/製造業を横につなぐプラットフォーム「KAMAMESHI」/小林俊氏
- キリンホールディングス株式会社発 新規事業/キリンのAI予測を使った薬局版・処方薬の置き薬「premedi」/田中吉隆氏
- リコーグループ発 新規事業/廃棄物分別特化AIエンジン“Raptor VISION”/田畑登氏
- ANAホールディングス株式会社発 新規事業/ANA Study Fly/渡海朝子氏
- NTTドコモ株式会社発 新規事業/はたらく部・HR高等学院/山本将裕氏
- NTTドコモ株式会社発 新規事業/MetaMe/吉田直政氏
審査員(※50音順)
- 麻生要一氏(株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO)
- 池田陽子氏(経済産業省 経済産業政策局 競争環境整備室長)
- 井上一鷹氏(株式会社Sun Asterisk General Manager)
- 及部智仁氏(quantum 共同創業者 会長/博報堂フェロー/東京科学大学 特任教授)
- 北嶋貴朗氏(株式会社Relic 代表取締役CEO / Founder)
- 合田ジョージ氏(株式会社ゼロワンブースター 代表取締役)
- 土成実穂氏(株式会社ユニッジ 代表取締役Co-CEO)
審査基準
審査員がこれまで膨大な新規事業の現場を見てきた実績に基づき、以下の観点から多面的に審査を行う。
- Why you
- Why your company
- 顧客・課題
- 提供価値・解決策
- 事業性
- スケーラビリティ
- 所属企業で実現することへの想い・所属企業へのインパクト
前回の約3~4倍の応募が集まったという今回。ここから最終審査に残った7団体のプレゼンテーションを紹介する。
地域の課題に密着した“地方発”の新規事業
最初に登壇したのは、あおもり創生パートナーズ株式会社発の新規事業「耕畜連携もみ殻事業」を率いる及川大佑氏だ。

同事業が注目するのは、青森県下の一次産業におけるもみ殻の課題だ。稲作事業者は米の収穫時に出るもみ殻の処理に困っている一方で、畜産事業者は家畜の寝床に敷くおが屑の価格高騰に頭を悩ませている。そこで、稲作事業者のもみ殻を敷料として畜産事業者に提供するという解決策が浮上するが、稲作と畜産が盛んな地域は離れているため運搬コストが高くつく上、もみ殻を調達できるのが米の収穫時期に限定されてしまう。
そこで、あおもり創生パートナーズは、もみ殻の受け入れから保管、運搬までを一貫して担うことにした。ポイントはもみ殻を3分の1に圧縮して保管効率・運搬効率を向上したこと。及川氏は「稲作事業者と畜産事業者の課題を同時に解決できる」と自信を見せた。
また、「地域金融グループのコンサルティング会社として、地域と一蓮托生という想いを持っているからこそできる事業だ」と及川氏。一事業だけでなく産業全体を成長させるため、いわば“ビジネス製造工場”として、事業が自走できるようになった段階で別の事業者に譲渡して新たな事業を立ち上げるつもりだという。
発表を受けて、株式会社Relic 代表取締役CEO/Founderの北嶋貴朗氏は、県外進出の予定について問うた。及川氏は「まずは県内にフォーカスするが、他の地域にも共通する課題である可能性が高いため、将来的には県外への展開も検討したい」と回答した。
