筋肉質な内製組織の有無が海外との差を生んだ
──次のトピックは「海外と日本のDXの違い」です。IBMやベイシアグループで、国内外のDXプロジェクトに携わってこられた樋口さんから、両者の違いをお話しいただけますか?
樋口:海外のDX先進企業として、米ウォルマートが挙げられます。彼らがなぜこれほど進んでいるのか。ウォルマートの場合はAmazonのように強大なライバルが存在し、経営に凄まじい緊張感があるからです。

樋口:小売に限って言えば、日本と海外の企業には10年もの差があると言われています。差を生んでいる要因の一つが、エンジニア組織のあり方です。ウォルマートはエンジニアだけで3万人規模の組織を持ち、自分たちでテクノロジーを回す内製化を徹底しています。
日本は産業構造上、約7割の人材を外部のSIerに頼っています。1980年代に数多くのSIerが誕生し、そこにIT人材が集中したことで、企業が外部に頼らざるを得ない構造になってしまったのです。対して米国は7割が事業会社側の内製人材です。
内製化を可能にする「筋肉質な組織」を持てるかどうかが、DXの実行スピードを左右します。ウォルマートはコロナ禍でEC売上を年率25%伸ばし、ECだけで20兆円という驚異的な規模を稼いでいます。これは内製組織による競争耐性があったからこそ成し遂げられた成果です。
「D」と「X」をつなぐイノベーターとマーケター
──日本企業でDXを推進するにあたり、チーム作りのポイントがあれば教えてください。
清水:DとXが遠いと、DXは絶対にうまくいきません。これをブレイクスルーするのは、大抵社内で“変わり者”扱いされているイノベーターです。
また「マーケティングの要素」もDXには不可欠です。最終消費者の行動にインパクトを与えるのがDXである以上、そのインパクトを伝える能力のある人がチームにいなければ、価値を社会に実装することはできませんから。
──次のトピックに移りたいと思います。樋口さんは小売企業(BtoC)の、清水さんは卸売企業(BtoB)のバックグラウンドをお持ちです。各業種/業態に見られるDXの特色はありますか?
樋口:メーカーにとっての魂は「物作り」そのものです。R&Dや生産工場のプロセスこそが差別化の源泉となります。
化粧品を例に挙げると、何をどう混ぜて期待以上の効果を生むかという「処方」には大きなイノベーションがあります。お客様にとってどのような価値があるか、差別化できるだけの魅力を感じていただくことが重要です。
清水:あらゆる業界に共通して言えるのは、ハードウェアの機能そのもので圧倒的な差別化ができない限り、必ず「サービス競争」になるということです。「安い・早い・買いやすい」といったコストと利便性の戦いになります。
ここで意識すべきことは「カスタマー・オブセッション」の姿勢です。Amazonが重要視する企業文化で、顧客に対する強烈なまでのこだわりや執着を意味します。ユーザーが期待する「次の驚き(WOW)」に応え続けなければならないという強迫観念です。
