「機能的価値」と「情緒的価値」の両立こそが成功の秘訣
セッションの終盤、竹村氏は桂花拉麺のLINEミニアプリの成功要因を改めて分析した。
この事例の最大のポイントは、商品やサービスの性能や実用性に基づく「機能的価値」と、商品やサービスが感情や心を動かすことで生まれる「情緒的価値」を調和させ、ユーザーとの粘着性の高いCXを構築した点にある。
マーケティング施策としてオーソドックスなキャンペーン、クーポン、ポイントなどを展開するだけでなく、「ケイカボーイ」という公式キャラクターを通じて、親しみやすさや愛着、癒しといった感情を喚起したことが、ユーザーの心を掴み、コアユーザーの増加を促したというのだ。
竹村氏は「しばしばアプリ開発において情緒的価値はおざなりになりがちです」と述べ、会場に向けて情緒的価値を意識したCX開発の重要性を訴えた。
竹村氏によれば、情緒的価値とは単一の機能だけではなく、小さな情緒的要素の複合的な積み重ねによって形成されるものだという。桂花拉麺のLINEミニアプリでは、ブランドが持つ歴史や文脈、キャラクターの言葉遣い、さらには時間帯や季節といった多様な要素を織り込んだメッセージングやクリエイティブが、アプリ全体の世界観を緻密に構築している。
そのこだわりは細部にも表れており、たとえばセッションタイムエラー時には無機質なアラートではなく「真心込めて仕込中」という看板を表示する。こうしたアプリの随所に散りばめられた「遊び心」こそが、情緒的価値を醸成し、ユーザーの心を動かすのだと竹村氏は分析する。
これからのCXに必要な視点と、プラットフォームが描く未来
竹村氏は、必ずしもすべてのアプリで情緒的価値が最優先されるわけではないと前置きしつつも、「AI時代のアプリ開発の成否を左右する重要な要素になる」と断言。機能的価値と情緒的価値を不可分な両輪として捉えた開発の重要性を、会場に向けて強く訴えかけた。
竹村氏が所属するオプトはCX開発支援サービス「DIGGIN’CX」を提供するほか、2025年9月には企業の公式キャラクターとAIを組み合わせたCXソリューション「Soulful AI」を提供開始。競合他社との差別化要因となる情緒的価値の創出を支援していくという。
最後に谷口氏が、LINEミニアプリの今後の展望を語り、セッションを締め括った。
「私たちの目標は、LINEミニアプリを誰もが日常的に利用するプラットフォームに育て上げることです。そのために、動線強化や新機能の追加に注力しています。優れたアプリやパートナー様と共にプラットフォームを強化し、今後さらにラインアップを充実させていきたいと考えています」(谷口氏)

