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セガ エックスディーの新規事業メソッド「ゲームフルデザイン」に学ぶ、人が「使いたくなる」体験の作り方

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「ついやりたくなってしまう」意識の仕掛け

 「意識(ついやりたくなってしまう)」の体験設計は、ユーザーの好奇心や遊び心を刺激し、自発的な行動を促す「仕掛け」作りが中心となる。

 伊藤氏は、この分野の研究で知られる大阪大学の松村真宏教授が提唱する「仕掛学」を引用し、その象徴的な事例として、ローマの「真実の口」を模した手指消毒器を紹介した。これを見た人は思わず「手を入れたい」という衝動に駆られ、その行動の結果として、本来の目的である手指消毒が達成される仕組みだ。

 このような「ついやりたくなる」仕掛けは、「物理的トリガー(見た目やモノの形)」と、それによって引き起こされる「心理的トリガー(心に湧き起こる感情)」の組み合わせによって成立していると伊藤氏は説明する。

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 たとえば、ゴミの不法投棄が頻発する場所に小さな鳥居を設置すると、人々はその場所を神聖なものと認識し(類推+社会規範)、ゴミを捨てづらくなるという事例がある。また、大阪駅の階段を「大阪環状線総選挙」の投票所に見立てたところ、多くの人が参加したいという「好奇心」から階段を利用した事例もある。

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 では、こうしたついやってしまう体験のアイデアはこうしたアイデアはどのようにして生まれるのか。伊藤氏は、チームで「原体験の洗い出し」を行う手法を推奨する。これは、メンバーが過去に「ついやってしまった」体験をリストアップし、その構造を分析して現在の課題解決に応用するアイデア発想法だ。

 たとえば、「トイレの蓋を閉めてほしい」という課題に対し、「クイズが出されるとつい答えたくなる」という原体験を結びつけ、「個室のドアにクイズを書き、正解は蓋の裏に記載する」というアイデアを生み出す。この考え方を応用し、山形県金山町の広報誌では、町の財政状況を間違い探しの形式で伝えることで、住民の理解度を飛躍的に向上させた実績も紹介された。

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「ついやり続けてしまう」粘着性の設計。9つの欲求と応用事例

 サービスの継続利用を促す「粘着(ついやり続けてしまう)」の体験設計において核となるのが、人間が本質的に持つ「9つの原理的な欲求」の理解だ。

 伊藤氏は、進化心理学の知見を基に、人間の不合理ともいえる行動の源泉を、一つの「生理的欲求」と八つの「社会的欲求」に分類・定義した。これには、「進歩実感」を求める達成欲求、自らの創造性を発揮したい有能欲求、物事を「自分事化」することで動機づけられる自律欲求などが含まれる。

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 たとえば「達成欲求」は、ラジオ体操のスタンプカードが埋まっていく喜びや、歩数計の数字が増えていくことで「あと少し」と歩きたくなる心理に代表される。人は、その行動の合理性に関わらず、「前に進んでいる」という感覚自体にモチベーションを見出す特性があるのだ。

 セガ エックスディーでは、これらの欲求を言語化し、さらに各欲求を刺激するための具体的な手法を101個にまとめている。

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 これらをボード形式のツールとし、各欲求のイメージと解説を記したカードと組み合わせることで、課題解決に向けた体験設計を構造的に行えるようにしている。

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 セッションの最後には、このフレームワークを実際に活用した新規事業として、ベネッセコーポレーションと共同で開発・運営している英語学習アプリ「Risdom(リズダム)」が紹介された。

 このアプリは、本格的なリズムゲームとしての面白さを追求しつつ、ゲームを有利に進めるためには英語学習が必要になるという設計になっている。ソーシャルゲームにおける「課金」の代わりに「学習」を位置づけることで、子どもたちは「ゲームをクリアしたい」という内発的な動機から自発的に勉強に取り組むようになる。これはまさに、「遊び時間を学び時間に」というコンセプトをゲームフルデザインによって実現した事例といえるだろう。

 伊藤氏は、ゲームフルデザインが万能ではないとしながらも、「『正論では人は動かない』という前提に立ったとき、有効な選択肢の一つになり得る」と述べ、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

Biz/Zine編集部(ビズジンヘンシュウブ)

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提供:株式会社セガ エックスディー

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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