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新規事業を成功に導く“デザイン”の力

「ビジョンプロトタイピング」で未来を共創する。新規事業の「対話のズレ」を埋めるデザインの力

第4回

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共感を軸に未来の光景を描く「ビジョンプロトタイピング」

 ここでは、ビジュアルシンキングで重要な二点目である「未来を描いて共創する」力の重要性についてお話しします。「未来を描く」ことがなぜ大切なのか。それは、新規事業開発では視点の異なる多くの関係者が関わり、意見がぶつかることは避けられず、特に初期段階では、定量的な根拠や実績が乏しく、議論が空中戦になりがちです。そうした時には、論理だけではなく「共感」によって意思をつなぐアプローチが求められるからです。

 quantumでは、こうした「共感」を軸にした意思形成を支えるための手法として「ビジョンプロトタイピング」という手法を採用しています。これは、まだ世の中に存在しないサービスやプロダクトが実現された「未来」を、ストーリーや映像、スケッチなどの「かたち」にして描き出すアプローチです。まだぼんやりとしていた構想を視覚化し、関係者と「同じ未来の光景」を共有することで、理解度や納得感を高めるのです。

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 具体的には、まずビジネス、エンジニアリング、クリエイティブの視点からプロダクトやサービス要件を定義し、その未来の物語を、親会社である博報堂の広告開発で培った映像制作技術を応用して制作します。実現可能性が高く、かつ情緒的にも訴求力の高い未来像を表現することにより、トップマネジメントや社外ステークホルダーに対し、定量的な戦略や分析だけではなく、「この未来を実現したい」と感じさせる情熱と納得の接点を生み出します。

 近年では、生成AIの進化により、こうしたビジョンの視覚化がより短時間で高品質に実現できるようになっています。初期の構想段階からリアルな未来像を提示することで、経営層の理解を得やすくなり、組織内の巻き込みやチームの結束にもつながります。

 加えて、XRを活用した「没入型のビジョン体験」を取り入れる事例も増えてきました。これは、プロジェクトで描かれた未来のサービス体験や空間デザインを、実際にその場にいるかのように体験できるアプローチです。スライドや映像では伝えきれないスケール感、空間の動線などを、より身体的に理解できるのが大きな特長です。

 生成AIやXR技術の進化によって、未来の仮説をより感覚的・直感的なレベルで検証できるようになってきました。こうした技術は、未来の体験をよりリアルに描き出すための強力な手段です。一方で、柔らかく未完成なアイデアを、あまりにも早い段階で具体的に表現しすぎると、そこで思考が固定化され、発想の自由度が狭まってしまう難しさもあります。「創造や議論の余白」を残しつつ、どこまでリアリスティックに見せるのか、というバランスをとることも、デザイナーの腕の見せ所です。

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デザイナーが実践する、チームの創造性を引き出すファシリテーション

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この記事の著者

門田 慎太郎(モンデン シンタロウ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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