三菱地所レジデンスで課題となっていた“接客品質のバラつき”
──三菱地所レジデンスは「AIを活用した接客品質向上」に取り組んでいると伺いました。どのような狙いがあるのでしょうか。
池田(三菱地所レジデンス):取り組みの狙いは「CX向上」です。
当社が販売している住宅は、一生に一度購入するかどうかの高額商材です。お客様には可能な限り質の高い提案や接客体験を提供したいと思っています。ただし、販売のプロセスでは必ず対面営業が発生するため、その際に不可避的に生まれる担当者による接客品質のバラつきよる顧客体験の差が課題でした。
営業担当者には若手、中堅、ベテランなど様々な属性のメンバーが存在しますし、お客様が提案や接客に求めるポイントも多様です。こうした中で、接客品質を一定に保つのは容易ではなく、結果として営業のスキルや成績にもバラつきが発生していました。
──そうしたバラつきを解消するため、従来はどのような取り組みを行っていたのでしょうか。
池田(三菱地所レジデンス):極めて非効率に思われるかもしれませんが、当社のスキルアップ施策は先輩社員によるロールプレイングが中心でした。理由は明確です。住宅という商材の特性上、お客様への対面営業は個室で実施しているケースがほとんどで、他の社員がその商談の様子を観察することはできません。そのため、たとえ優秀な営業担当者がいても、商談のノウハウを共有する方法は限られていました。結果として、座学での知識共有やロールプレイングを通じて、先輩社員から後輩へ スキルを伝達する手段がなかったのです。
ただし、その状態に危機感を覚えて、打開策を試みたこともあります。その一つが、営業現場の音声解析でした。営業成績やNPS(顧客推奨度)の高い担当者の提案を録音して、音声解析サービスを提供する企業に分析を依頼しました。しかし、その際に利用したサービスは文字起こしの精度が低かったり、分析結果が出るまでに1ヵ月を要したりと、課題がありました。
分析に1ヵ月も要してしまうと、住宅の販売期間が終了して、分析結果自体が無用になることもあります。そうした試行錯誤をするなかで出会ったのが、Umee Technologiesの「Front Agent」でした。
試行錯誤の末に出会った「Front Agent」。導入の決め手は?
──様々な失敗を重ねるなかで、「Front Agent」に惹かれた理由は何だったのでしょうか。
池田(三菱地所レジデンス):サービスに出会ったのは、とある企業マッチングサービスがきっかけでした。当時、「Front Agent」はオンライン会議の音声を解析するサービスだったのですが、当社の課題を説明すると、しばらくして「対面営業向けの機能を開発しました」とご連絡をいただきました。その一連の対応で、「熱意のある企業だな」と印象を抱いたのを覚えています。その後、テスト導入を実施した際にも、現場の営業担当者から評価が高く、十分な効果が期待できたため、本導入に至りました。
新納(Umee Technologies):私の印象としては、三菱地所レジデンスの皆さんは仮説思考を身に付けている方が多く、それゆえに「Front Agent」との親和性が高かったのではないかと思っています。
「Front Agent」は、録音された会話音声のビックデータをAIで分析し、インサイトにつながる仮説立案と検証が可能になるインサイトアナリシスです。これにより、優れた営業活動のノウハウの可視化や、エビデンスに基づいた顧客インサイトの抽出などが可能となります。ただし、そうしたインサイトを有効に活用するには、ユーザー側が課題解決のための仮説を持ち、分析結果を戦略に落とし込むような取り組みが欠かせません。「AIツールを利用して、どのような成果を得たいのか」というビジョンが明確だった点が、三菱地所レジデンスの皆さんが「Front Agent」を有効に利用できた要因だと思います。

