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理念を「実態」に変える経営へ──BIOTOPEが明かす「インサイドアウト・ブランディング」とは

登壇者:株式会社菱田工務店 代表取締役 菱田昌平氏/株式会社BIOTOPE 松隈太翔氏

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「スタンス」が組織を動かす:ビジョンが実体となった瞬間

 最大の成果は「外側の装い」以上に「内側の人間」が主体的に動き出すことだ。菱田氏はビジョンマップによる最も大きな変化を語った。

「一番大きく動いているのは、地元の資源を使うことです。10年以上前からやりたいと言っていたことなのです」(菱田工務店・菱田氏)

 ビジョンマップで「坂城町の木材自給率100%」を掲げた結果、菱田氏一人の「思い」が会社全体の「プロジェクト」へ昇華。昨年、山を買い「社有林」を持った。

「社有林を持てたから、山が好きな職人はそこへ行き、勝手に木を切り、椅子やスツールを作ってイベントを始めるなど。私を超えて、スタッフが主体性をもって動いてくれています」(菱田工務店・菱田氏)

 これは、トップの「スタンス」が言語化され(フェーズ1)、職人レベルで「自分ごと化」された(フェーズ2)結果、具体的な「行動」(=実体)として表出した事例だ。森づくり(入口)から家づくり(出口)に関わる循環モデルが回り始めた。

質疑応答から見る「スタンス経営」のリアル

 最後の質疑応答では、「スタンス」を軸にした経営の、さらに踏み込んだ実態が明らかになった。

人材戦略:「ビジョン」が最強のリクルーティングツールになる

 人材育成を問われた菱田氏は、驚くべき実態を明かした。創業当初は地元採用を試みたが、「私のビジョンと情熱が強すぎて」定着しなかったという。そこで「全振り突破する」と決意。

 結果、「今、スタッフは90%が県外・海外です」という。長野県の小さな町に、菱田氏の「スタンス」に共感したグローバルな人材が集まっている。明確なスタンスこそが、現代最強の人材獲得戦略であることを示している。

発信戦略:「7割は宣伝力」。スタンスをSNSで最大化する

 菱田氏のSNS活用法も示唆に富む。20代で「商品の“商品力”と“宣伝力”の比率は3対7だ」と業務のなかで直面する。職人かたぎで「3」を磨いてきたが、SNSの登場で「小さい会社でも7(ナナ)を取れる時代が来た」と感じ取った。

「いいものだけ作っていても届かなければ売れない。この時代なら私でも取りに行ける。だからこそ『7(ナナ)』を徹底的にやっています」(菱田工務店・菱田氏)

 これは、内向きで終わらないことを示す。「内側」で磨いたスタンス(商品力3)を、「外側」のツール(宣伝力7)で発信しきる。両輪があってこそブランドは影響力を持つ。

読者への示唆:自社の「スタンス」は何か

 本セッションは、ブランディングがもはやマーケティング部門の専管事項でなく、経営そのものであることを印象付けた。菱田工務店の事例は、経営者の「思い」を「スタンス」という武器に転換し、組織を動かし、事業をドライブし、人材をも引きつける、インサイドアウト・ブランディングの強力なプロセスを証明した。

 読者は自社に問いかける必要があるだろう。

  • われわれの「スタンス」(社会への向き合い方、哲学)は何か?
  • スタンスは、従業員が「自分事」として語れるほど「見える化」されているか?
  • スタンスは、社内制度、採用、プロダクト、日々の業務に「一貫」して反映されているか?

 外側を飾るブランディングは終わった。自社の「内側」にある真実(オーセンティシティ)を見つめ、「実体」に変えていく。菱田氏が目指す「工務店2.0」のように、自社の存在意義をアップデートする旅はそこから始まる。

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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