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ビジネスの原動力は論理より衝動。髙島社長が山口周氏と語る、artienceへの「再創業」の想い

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「リベラルアーツ」なきダイバーシティは成立しない

中川:髙島社長は「アート」の定義を、単なる芸術作品ではなく「リベラルアーツ」としても捉えているそうですね。

髙島:はい。弊社の事業は世界20ヵ国以上に広がっています。グローバルな舞台で戦うためには、単なるビジネススキルだけではなく、歴史、哲学、文化人類学といった人文科学の知見が欠かせません。たとえば、インドの拠点で現地の文化に触れる際、それを自分の物差しで批判的に見るのではなく、なぜその文化が歴史的に形成されてきたのかを理解しようとする姿勢が必要です。

中川:その考え方は、社内のダイバーシティの推進にもつながっているのでしょうか。

髙島:私は多様性を3つのステップで考えています。第1に「自己の確立」、第2に「他者の尊重」、そして第3にそれらをぶつけ合わせる「イノベーションの創出」です。自分自身が「アート(主観)」を持っていない人間は、他者の「アート」を尊重することもできません。リベラルアーツを学ぶことは、自分をステレオタイプから解放し、本当の意味で他者とつながるための準備なのです。

中川:山口さんは、現代のビジネスパーソンにとってリベラルアーツが武器になる理由をどうお考えですか。

山口:それは「自己承認」と「他者承認」の知的な土台になるからです。リベラルアーツの語源は「人間を自由にするための学問」です。世の中の「こうあるべきだ」という常識から自由になり、自分自身の内なる声に耳を傾ける。同時に、異なる背景を持つ他者が何を正しいと考えているのかを想像する。この「主観と主観の対話」を支えるのがリベラルアーツであり、これなしには真のダイバーシティも成立しません。

圧倒的な「熱量」と「行動量」がセレンディピティを呼ぶ

中川:この「Incubation CANVAS TOKYO」という場所は、偶然の出会いから新しい価値が生まれる「セレンディピティ」を期待して作られたそうですね。

髙島:私自身の経験を振り返ると、セレンディピティが起きる瞬間には共通点があります。30代の米国駐在時代、私は24時間ずっと「どうすればもっと顔料を拡販できるか」ということばかりを考え抜いていました。日々、全米を飛び回る中で、あるお客様を訪問した際に、プロセスを一気に短縮する新しい技術に出会いました。私の「熱量」と「現地の知見」が偶然重なり、イノベーションにつながったのです。要件は、知識以前に「強い想い」と、それにともなう「圧倒的な行動量」だと思います。

中川:山口さんは、企業が組織的にセレンディピティを起こすためには、どのような仕組みが必要だとお考えですか。

山口:日本の企業は「打率(成功率)」を気にしすぎです。イケアのイノベーションラボでは「成功率が1割を超えたら、リスクを取っていない証拠だ」と評価されるそうです。また、「年齢の多様性」も重要です。既存のモデルを壊すイノベーションの多くは20代から生まれています。しかし日本の組織は20代を「経験不足」として発言権を制限してしまう。経験がないこと自体が最大の武器になる。若い世代にどんどん打席を譲ることが、組織のセレンディピティを高める最短ルートです。

企業の究極の役割は「平和」を作ること。髙島社長が描くartienceの未来像

中川:129年目の再創業とも言える今回の変革を経て、髙島社長が描く「artience」の最終的なゴールはどこにあるのでしょうか。

髙島:私は企業人の究極の役割は「平和を作ること」だと思っています。世界中でビジネスを展開し、現地の人とお互いに利益が出る「Win-Win」の関係を築く。サプライチェーンで強固につながることが、結果として国家間の対立を防ぐ抑止力になる。社名を「artience」に変え、すべてを変える覚悟で取り組んでいますが、一つだけ絶対に変えないものがあります。それは、我々の経営哲学である「人間尊重の経営」です。アートもサイエンスも、すべては人間の幸せのためにある。この原点を忘れずに、感性と科学が響き合う社会を作っていきたいです。

中川:最後に、一言メッセージをお願いします。

山口:イノベーションとは、結果としてそう呼ばれるものであって、目的ではありません。大切なのは、あなた自身の「衝動」を信じることです。何に怒り、何を美しいと感じるのか。そのピュアな想いを持ち続けることが、結果として世界を変える力になります。

髙島:ぜひ、この「Incubation CANVAS TOKYO」に遊びに来てください。ここには異なる感性がぶつかり合う仕掛けがたくさんあります。皆さんの「想い」を、私たちの「技術」と掛け合わせ、一緒に新しい未来を作っていきましょう。

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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