なぜ「日本独自のスタートアップエコシステム」が必要なのか
イノベーション創出において、日本の大企業は長らくシリコンバレーを模範としてきたが、両国の経済構造には決定的な違いがある。米国はGoogleやMetaなど「元スタートアップ」が経済を牽引する「スタートアップ主導型」だ。対して日本は、大企業と中小企業による「既存企業主導型」であり、これらが経済や雇用の強固な土台を形成している。
この差異を鑑みれば、シリコンバレーモデルをそのまま模倣するだけでは少なからず無理が生じる。日本では既存企業の強固な基盤を活かし、スタートアップの成長を支援する独自モデルの構築が不可欠である。
両者の関係は相互補完的だ。スタートアップはイノベーション創出や迅速な試作に長ける反面、量産設計や品質保証、保守体制などの「モノづくり」や「オペレーション」に課題を抱え、資金支援だけでは成長が難しい。一方で既存企業は、製造拠点や生産技術など、質と信頼を担保する豊富なリソースを持つ。既存企業がこれらの「資産(アセット)」を提供することで、スタートアップの成長を加速させ、日本全体のエコシステム活性化に繋がる。
ベンチャー・サービサーモデルがもたらす「3つの果実」
もともと既存企業とスタートアップの連携手法には、大企業がスタートアップの顧客となる「ベンチャー・クライアントモデル」がある。それに加えて、今後日本で重要となるのが「ベンチャー・サービサーモデル」だと考えている。これは筆者の造語で、既存企業が自社の強み(製造能力、物流網等)をスタートアップに「提供」して成長を支援し、自らも新規事業創出やイノベーションの取り込みを行う手法を指す。
既存企業が本モデルに取り組むメリットとして、3つのリターンが期待できる。1つ目に、製造支援や物流などのアセットを外販することでの新規収益の確保。2つ目は、役務提供の対価として現金に加え株式を受け取ることによる、将来的なキャピタルゲイン。最後に、協業を通じてスタートアップの実力や技術の真価を見極める「目利き力」の構築がある。
日本の既存企業が培った「現場ノウハウ」や「オペレーション」は、世界に誇る競争力の源泉となる。これらの適用範囲を自社製品に絞り込まず、スタートアップに開放して「ベンチャー・サービサー」の役割を担うことこそが、日本独自のエコシステム成功の鍵となる。
