「世界の工場」中国でのスタンダード化とドイツが狙う世界覇権
「グローバルプラットフォーム」を意識した活動において、重要な鍵を握るのが「世界の工場」とも呼ばれる中国だ。深刻な大気汚染に悩まされ、急速な賃金上昇が進んでおり、ソフトウェアを用いた効率的な工場運営が求められている。その課題を解決し、中国でスタンダードとなれば世界のスタンダードとなることは間違いない。
現在、中国では「中国製造2025」を掲げ、工場運営の効率化を進めようとしているが、これはドイツの「インダストリー4.0」をほぼ踏襲したものと言われている。ドイツは数年でマスカスタマイザレーションを実現し、自国内の工場運営に活用するだけでなく、中国をはじめ世界各国にスマート工場として販売することを産業として確立しようとしているわけだ。
「ドイツの思惑と、中国の利害が一致していることから、強力なパートナーシップが築かれつつある。それは、日本にとって確実に大きな脅威となるだろう。グローバルプラットフォームをおさえなければ、日本の製造業の未来はないと言っても過言ではない」と尾木氏は警鐘を鳴らす。
当然ながら、そんなドイツがAIやIoTなどのIT技術の進んだ米国を意識していないはずがない。たとえば、iPhoneは7割の部品を日本が製造しているにも関わらず、大部分の利益をAppleがとるとも言われている。製造業とソフトウェアの力関係が変化し、ソフト重視の時代になっているのだ。
日本以上に、ドイツは自動車を含め製造業への依存度が高い。方向を間違えば、米国の下請けになりかねない。事業の主体を自身で持つこと、それがドイツの課題というわけだ。そして、人件費やエネルギーコストが高いというドイツの現状と課題は、そのまま日本にも当てはまる。
ベルリンの壁崩壊後に、ドイツでは東ヨーロッパの安価な労働力を背景に、工場の移転が進み、製造業の空洞化が進んだ。また、エネルギーに関してドイツは2022年までに原発を全撤廃することを決定しており、クリーンエネルギーのみで産業界を回す選択をしている。産業的には大変厳しい環境を負って、世界と戦っていく必要がある。
そこで、ドイツが取り組むのが「高付加価値商品の製造だ。高付加価値とは、個人に細やかに適応することであり、ソフトウェアを用いてデータからカスタマイズすることが重要となる。また新製品の開発スピードを上げることで収益を上げるというわけだ。