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AI時代の両利きの経営

デンソー流「フィジカルAI」の本質──AIと人の共生による「カイゼン・技能伝承・所作」という生存戦略

ゲスト:株式会社デンソー 池田光邦氏、高田あさ美氏

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「茶道」の所作をロボットとAIで学ぶ理由とは

小宮:池田さんは、工場や車といった領域以外にも、茶道にロボットを導入する試みをされているそうですね。

池田:はい。「美しい所作」をAIに学習させたかったんです。これまでのロボットモーションの進化を見ると、関節角度を直接操作する時代から、カメラシステムでの誤差修正、そして生成AIによる模倣学習(VLA)へと進んできました。

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 私たちはそこからさらに一歩進み、図の右上に示した「人を高める知能化」を目指しています。単に対象物を扱うだけでなく、職人の「暗黙知」や「心使い」をAIテクノロジーと融合させ、人ならではの意図ある動きを再現する。それが私たちの掲げる「美しい所作」の実現です。

小宮:海外のAI開発では機能性が重視されますが、デンソーは「所作」という感性の部分に踏み込んでいるわけですね。

池田:そうです。日本には、歴史ある「所作文化」があります。

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 「型(作法・心得)」と「薫陶(人柄・精神)」を掛け合わせ、新しいものを生み出していく「守破離」のプロセス。この日本独自の美意識をAIに学習させることで、人と深く共鳴するロボットを創りたい。日本文化特有の丁寧な動きをロボットが再現できれば、人と共に暮らす際の受容性が格段に高まります。

 生成AI時代のロボットAIは、物体認識といった「機能」と、職人の心使いといった「美しい所作」をハイブリッドに両立させることが、人共生AIロボットを創る鍵となります。

「現場の実践知データ」という、日本企業が勝ち抜く処方箋

小宮:デンソーの中期経営計画でも触れられていますが、現場の「実践知」は池田さんたちの取り組みとどうリンクするのでしょうか。

池田:まさに、これまでの技術では取れていなかった「人のデータ」のことです。Jullieの構造は、目や耳に相当するセンサーと大脳、そして手足口に相当する小脳を組み合わせることで、だんだん人と近くなってきました。

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小宮:認知科学や脳科学、心理学といった幅広い学問が融合しているのですね。

池田:ええ。AIが人に寄り添い、コミュニケーションを取ることで、ベテランがなぜそう判断したかという「意図」を引き出す。意思疎通には機能だけでなく意図を伝えることが重要であり、それがJullieのアーキテクチャの根幹にあります。

 この「取れていなかった知恵」をデータ化し、AIとミックスして継承していく。これこそが、他社が容易に模倣できない、日本のものづくりの次なる競争力の源泉になります。

小宮:最後に、読者へのメッセージをお願いします。

高田:AIが出てきたことで「仕事が奪われる」と恐れるのではなく、自分たちの働き方が変わるチャンスだと捉えてほしいです。AIとロボティクスで人と技術がより自然に共生する未来づくりを共に進めていきましょう。

池田:「想い描き続けた夢は、世界を揺らすアートになる」。多くの人がAIロボットと共感し、新しく自分らしい価値を手に入れる未来を、私たちは創り続けます。

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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