記憶を呼び起こすデザイン、プロセスを邪魔しないデザイン
7. 記憶のバグ(メモリー・バグ)
必要な記憶を呼び起こしたいときにうまく出てこないのが、「記憶のバグ」だ。これは、人が記憶するときには、自分を通過する情報か、覚えておくべき情報かの仕分けを行っているために起きる現象である。前者に仕分けされた場合には、後になってから思い出すのは難しくなるのだ。例えば、パーティーで名刺交換した相手の名前が思い出せない、ショッピングモールの駐車場であとから停車位置が分からなくなる、パソコンやサービスのIDとパスワードを忘れてしまう、といったものだ。
記憶がビジュアルと強く結びつくことを利用して、すぐに読みたい雑誌を探し出せるような本棚を作りたいと考えたのが、マガジンスタンド、「ladd」である。本棚に差し込まれた雑誌の中から、背表紙だけでは目当てのものを見つけ出すのは難しい。そこで、ユーザーの記憶を助けるべく、雑誌の表紙を半分見せて12冊(1年分)ずつ置けるように、段状のデザインとした。情報が美しく整理された状態で、最速で記憶を呼び戻せるのだ。