Institution for a Global Society(IGS)は2026年6月23日、「GROW360+」人的資本白書2025年度版を発行した。本白書は、人的資本経営に継続的に取り組む29社・7,418名を対象とした360度評価のコンピテンシーデータ、計2,763,387件を分析した実証レポートとなっている。管理職登用・育成・人材評価の現場で直面する課題に対する5つの知見がまとめられている。

知見1では、管理職と一般社員の能力差で最も大きな領域が「影響力の行使」(+17.3pt)となっていることが示された。「論理的思考」「課題設定」「誠実さ」などが続くが、能力差は特定領域に集中していた。これにより、管理職候補の選定基準見直しの参考になる。
知見2は、自己評価と他者評価のズレがほとんどの対象者で見られる点に言及。「過大評価型」「過小評価型」「適正認知型」の三類型に分類される中、例えば「情熱・宣教力」では多くの社員が実態より低く自己評価しがち(−9.9pt)であることが判明。一律の研修アプローチでは成果が出にくいことが示唆された。
知見3は評価バイアスの課題を明らかにしている。12,346名の評価者データでは、約44%が採点に偏りを持つことが判明。個人のスコア順位は最大で20pt以上動くケースもあり、IGS独自の補正技術で公平性を担保する取り組みが紹介されている。
知見4は、人材の成長が「成長型」(18%)、「やや成長型」(39%)、「安定型」(34%)、「伸び悩み型」(9%)の4パターンに分かれるという結果。成長タイプは固定化しないことが確認され、適切な介入によってタイプの変化が可能であることが示された。
知見5では、管理職候補リストが現管理職に類似した能力構造の人材に偏りやすいことが分かった。これは現状維持型のリーダー候補になりやすく、今後求められるリーダー像と必ずしも一致しない可能性があるとされている。
本白書は、評価バイアス補正の有無や管理職候補リストの妥当性など、人的資本情報の信頼性に関して経営・人事層が再点検すべき論点を提示している。監修は一橋ビジネススクール教授の小野浩氏が務め、人材投資の意思決定に実証的根拠が必要であるとの見解を述べている。
「GROW360+」は、資質・コンピテンシー・スキルの自己評価と他者評価を統合したプラットフォーム。IGSは今後も評価データの信頼性を高め、企業の人材開発および人的資本開示支援に注力する方針である。
白書はIGSの公式サイトより無料でダウンロード可能。
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