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CX起点の事業変革

バリューチェーンから「バリューサイクル」へ。旭化成ホームズが実践する、縦割りを壊す顧客起点の事業変革

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 国土交通省の発表によれば、2025年の新設住宅着工戸数は前年比6.5%減の約74万戸となり、過去最低を記録した。市場縮小が常態化し、「新築販売依存型」の事業構造が限界を迎える中、いち早く「長期関係型」のビジネスモデルへと舵を切ったのが旭化成ホームズだ。同社は2019年に「ALL for LONGLIFE」戦略を掲げ、部門ごとに分断されていた顧客接点をデータで統合。従来の顧客関係性をより強化し、築30年を超える顧客の満足度をV字回復させるという成果を上げている。サイロ化した大企業をいかにして「顧客中心」の組織へと生まれ変わらせたのか。全社のDX・IT推進を牽引する中村干城氏と、LONGLIFE戦略を推進する野口豪之氏に、Biz/Zine編集部の梶川がその裏側を聞いた。

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「建物」から「人」へ。新築依存からの脱却

Biz/Zine編集部・梶川(以下、梶川):まずは、お二人のこれまでのキャリアと、現在の役割について教えてください。

野口豪之氏(以下、野口):入社後は長く営業を担当し、展示場や紹介専門の組織を経て、2018年にマーケティング部門へと移りました。そして2019年に、中村と一緒にLONGLIFE戦略をアップデートした「ALL for LONGLIFE」を発表し、現在に至ります。現在はLONGLIFE戦略推進本部の本部長を務め、お客様のCS(顧客満足度)向上と事業拡大の推進を担っています。

中村干城氏(以下、中村):私も最初は営業畑でして、2008年にマーケティング部門へ異動し、広告宣伝などのプロモーションを約15年担当しました。そして2023年度から、DX・IT推進本部の本部長を務めています。マーケティング時代、野口はリフォームやアフターサービス、アパート管理などのストック事業を担当し、私は新築の請負住宅を担当するという形で、新築とストックの両輪で事業を支援していました。

旭化成ホームズ株式会社 執行役員 DX・IT推進本部 本部長 中村干城氏
旭化成ホームズ株式会社 執行役員 DX・IT推進本部 本部長 中村干城氏

梶川:新設住宅着工戸数が過去最低を記録するなど、市場環境が大きく変化しています。「LONGLIFE」という戦略に重きを置くようになった背景には、どのような危機感があったのでしょうか。

野口:厳しい言い方になりますが、住宅産業は建てた後にもクレームが発生しやすい「クレーム産業」と呼ばれる側面がありました。しかし、本来は「建てて終わり」ではなく「建ててからが大事」です。これまでは新築需要で事業が成長してきましたが、人口減少や着工件数の減少が見込まれる中では、「建ててから」、つまりストック事業やアフター事業を伸ばしていくしかありません。

 以前の「ロングライフ住宅」という言葉は、建物を安全で長持ちさせるという「ハード」を対象としていました。しかし、2019年の「ALL for LONGLIFE」戦略では、対象を「建物」から「人」へと広げました。そこに住まう人の命、暮らし、人生そのものに寄り添い、LTV(ライフタイムバリュー)を最大化していくことへと舵を切ったのです。

旭化成ホームズ株式会社 執行役員 LONGLIFE戦略推進本部長 野口豪之氏
旭化成ホームズ株式会社 執行役員 LONGLIFE戦略推進本部長 野口豪之氏

縦割りを打破する「バリューサイクル」への転換

梶川:LTVの最大化に向けた全社的な方針転換において、組織や現場の動きはどのように変わっていったのでしょうか。

中村:家を建てて、点検し、リフォームし、場合によっては売却する。これまで私たちは、このバリューチェーンの中で各部署がそれぞれの業務を担っていました。それを、お客様を真ん中に置いた「バリューサイクル」へと発想を転換したのです。

 バリューチェーンの考え方では縦割りになってしまっており、たとえば点検の担当者がお客様と接した際、仮にリフォームのニーズがあったとしても、「私は点検の担当なので、次回の点検時期だけ決めましょう」と自分の業務だけで完結してしまうことがありました。しかし、お客様を真ん中において価値のサークルを作るためには、横の部門としっかり手をつなぎ、自分に来た情報やパスを両隣の部門へ回していかなければなりません。この「お客様への当たり方」を根本から変える必要がありました。

野口:事業として数字を追うことは当然ありますが、最も大きな旗印は「お客様を真ん中に置き、様々な部署の担当者がお客様の“最善”を考えて寄り添う」という姿勢です。押し売りをするのではなく、ベストな提案を行うための部門間連携を進める活動を、地道に続けてきました。

中村:さらに、接点を保ち続けるためには「家」というハードだけで勝負すると限界があります。そこで私たちは、ヘーベル電気、ヘーベルガス、ヘーベル光といった通信・インフラビジネスを展開し、ここが今、非常に大きく伸びています。建物のメンテナンスという何年かに一度の接点だけでなく、日常のエネルギーや通信という側面からもつながりを持つ。お客様の生活の中で新しいサービスを出し続け、既存事業と新規事業でその間を埋めていくことで、バリューサイクルの枠そのものを広げています。

梶川:非常に美しい戦略ですが、長年「新築」を主力としてきた大企業において、部門を超えた連携や顧客中心へのシフトを現場レベルまで浸透させるのは至難の業だと思います。それを可能にした、御社の組織の根底にあるものについて伺わせてください。

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変革を支えた創業50年の「記録を残す」DNA

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この記事の著者

梶川 元貴(Biz/Zine編集部)(カジカワ ゲンキ)

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