大企業発新規事業を2つの部門で評価する「第三回 日本新規事業大賞」
企業の可能性を広げる事業を立ち上げ、それによって企業変革を成し遂げている新規事業に贈られる「日本新規事業大賞」。この賞は、歴史ある事業会社の中で泥臭く挑戦を続ける「社内起業家」たちに光を当て、彼らの挑戦を応援・加速させるエコシステムとして設計されている。
第三回を迎えた今回は、より多くの挑戦を拾い上げ、適切な基準で評価するために「シード部門」と「グロース部門」の2つの部門が新設された。シード部門は、これからの不確実な未来へのワクワク感や、顧客・課題に対する強力な原体験、熱量を伝えるフェーズの事業を対象としている。一方のグロース部門は、すでに一定の市場実績を有しており、さらなる事業拡大や社会実装のフェーズに入った事業を対象としている。
最終審査登壇者
- 日清医療食品発 新規事業/おむかえデリ/髙木麻衣氏
- フジ・ネクステラ・ラボ発 新規事業/リアルタイム質疑応答支援システム「Live-QA」/玉岩秀一氏
- アサヒグループジャパン発 新規事業/フードダイバーシティ事業(LIKE)〜酵母でできたあたらしいミルク「LIKE MILK」/畠徳望博氏
- 日立製作所発 新規事業/デジタルアセット取引AML共同化構想/岸功氏
- ソフトバンク発 新規事業/次世代の自律型AIエージェントプラットフォーム「AGENTIC STAR」/上原郁磨氏
- アコム発 新規事業/エンベデッド・レンディング マネーのランプ/GeNiE 齊藤雄一郎氏
- ソフトバンク発 新規事業/自律思考型AIエージェントによる次世代コンタクトセンター基盤事業 - 日本の「対話力」を、人×AIで社会実装する -/Gen-AX 砂金信一郎氏
- 東京海上日動発 新規事業/Carjany/Carjany 渡邊裕太氏
審査員(※50音順)
- 麻生要一氏(アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO)
- 池田陽子氏(経済産業省 経済産業政策局 競争環境整備室長)
- 北嶋貴朗氏(Relic 代表取締役CEO / Founder)
- 合田ジョージ氏(ゼロワンブースター 代表取締役)
- 佐橋宏隆氏(SBイノベンチャー 取締役 / STATION Ai 代表取締役社長 兼 CEO)
- 土成実穂氏(ユニッジ 代表取締役Co-CEO)
独自の給食ノウハウと巨大物流網で夕食の家事負担を解決する
最終審査会の前半戦は、「シード部門」の4社によるピッチから幕を開けた。トップバッターとして登壇したのは、日清医療食品の髙木麻衣氏だ。
髙木氏が提起したのは、共働き世帯が7割を超える現代でも変わらない「夕食作りをはじめとする家事負担」だ。解決策として、保育園のお迎え時に夕食セットをそのまま持ち帰られるサービスを提案した。
提供される夕食は、普段子供たちが園で食べている給食をベースに開発され、子供が違和感なく喜んで食べる味付け、徹底された栄養・衛生管理など、日清医療食品が50年以上にわたり培ってきたノウハウそのものが最大の付加価値となっている。
実証実験では、販売日の80%を利用する家庭が現れるなど、生活に不可欠なインフラとして機能している。他社に対する優位性として、全国5,400ヵ所の既存物流網の活用、約8万人の食嗜好データの蓄積、既存の園との信頼関係による顧客開拓コストの抑制を挙げ、「誰かの夕方を少しでも優しい時間に変えたい。大企業にいる一人の若手として、この変化を必ず形にする」と決意を語った。
発表を受け、審査員の土成実穂氏からは具体的なオペレーションや園側の負担について質問がなされた。髙木氏は、現状は園内に小型冷凍庫を設置し予約者が自分で持ち帰る簡易な仕組みをとっていると説明。懸念とは裏腹に、実証実験を行っている園からは「親御さんが喜ぶ姿が見られて良かった」との意見があり、職員自身も利用できるため現場からのマイナスな意見は現時点ではないと回答。今後は他領域への横展開も視野に入れているという。
リアルタイムの発話先読みで対外コミュニケーションを支援する
続いて、フジ・ネクステラ・ラボの玉岩秀一氏が登壇した。
玉岩氏が注目したのは、経営者やIR・広報担当者が最前線に立つ「質疑応答の場」におけるリスクだ。質問の意図がすぐに見えずアドリブ対応になることで、沈黙や表現のブレが生じ、炎上のリスクが高まる。この企業にとって最もリスクの高いコミュニケーションを、個人の力量に依存した対応からチームで支える体制へと転換するのが、リアルタイム質疑応答支援システム「Live-QA」だ。
発話をリアルタイムで先読みし、回答候補の整理や準備を前倒しすることで、一貫性のある回答を準備するための時間的余裕を生み出す。メディアグループ企業の一員として、生放送などの絶対に失敗できない現場で培ったノウハウと、放送品質のITを融合して実現。答えを作るAIではなく、説明の質と一貫性を支え、最終的な判断・発言はすべて人間に委ねる新しいインフラとして、今年2月から販売を開始している。
この発表を受けて、審査員の北嶋貴朗氏からは、想定されるマーケットサイズと、実際の導入企業の反応や使いこなす難しさについて質問が及んだ。玉岩氏は、日本の上場企業約4,000社、大企業約12,000社のすべてがターゲットであり、その先には海外も視野に入れられると言及。操作性については、ブラウザ、ネット回線、マイクさえあれば稼働し、既存の想定問答を学習させることで、回答候補の提示やバックヤード連携ができるため、利用は容易であると回答した。すでに導入した企業からは、デモを見た直後に「すぐに見積もりが欲しい」と連絡がきた例を挙げ、手応えを語った。
