IRMの実践に求められる「先発完投」の経験者
では、このIRMを実践する主体組織には、イノベーター人材は必要ないのでしょうか。理想論を言えば、IRMの実践主体にも「新規事業開発を一通り経験した人材」、いわば「新規事業の先発完投経験者」がいることが望ましいと言えます。なぜなら、プロジェクトチームが壁にぶつかったとき、IRM実践者に経験があれば、より早く、高い精度で状況を理解し、共感できるからです。結果として、イノベーター人材が真に求める効果的な支援策を打ち出しやすくなります。
スタートアップ界隈では、何度も起業とEXITを経験したシリアルアントレプレナー(連続起業家)や、成功を収めた元創業者がメンターや投資家となり、次世代のスタートアップを支援することが慣習となっています。
とはいえ、多くの企業において新規事業開発や起業の成功経験者は非常に少ないため、IRM実践組織へのアサインは現実的に難しいかもしれません。しかし、「経験した新規事業の成否に関わらず、社内で新規事業開発経験のある上司の下で活動するメンバーほど、高い成果を生み出す」というデータも存在します。
一度でも新規事業開発の経験がある人材は、リーダーやチームメンバーの痛み・悩みを理解し、深い共感をもって伴走できます。もし自社内だけで体制を構築できない場合は、社外の新規事業開発経験者との連携・協力も積極的に視野に入れるべきです。
IRMを前提にイノベーター人材への支援を続けると、事業は「順調に次の段階へ進めるもの」と「そうでないもの」に分かれてきます。現実には大半の新規事業は失敗するため、後者のほうが圧倒的に多いと言えるでしょう。
思うように進捗せずKPIが未達の事業や、成功確度・期待値が低い事業に対しては、撤退や方向転換(ピボット)の決断をくださなければなりません。
次回は、良質な多産多死を実現するための「良質な撤退」の考え方について解説します。



