成果を最大化する「イノベーター・ジャーニー・マップ」とは?
イノベーター人材の発掘・配置が完了すれば、いよいよ個別の新規事業開発へと突入します。既存事業とは大きく異なり、新規事業は「高い不確実性」をコントロールするための特有のプロセスを歩むことになります。
企業としてIRM(Innovator Relationship Management)を実践し、イノベーター人材やプロジェクトチームの能力・成果を最大化するためには、まず新規事業開発プロセスの全体像を理解する必要があります。その上で、各プロセスでイノベーター人材がどのような壁や課題に直面し、どのような思考や感情を抱くのかを知り、共感することが重要です。
そこで筆者が提唱しているのが、「イノベーター・ジャーニー・マップ(IJM)」の活用です。これは、マーケティングなどで用いられる「カスタマー・ジャーニー・マップ(CJM)」をIRMに応用したものです。CJMが顧客の購買プロセスにおける思考・感情・行動の変化を時系列で可視化するのに対し、IJMはその対象を顧客から「イノベーター人材」に置き換えています。
イノベーター人材は、不確実性が高く困難をともなう新規事業開発の過程で、常に強いプレッシャーにさらされています。様々な事業課題や組織課題に直面するたびに、ネガティブな思考や感情に陥るリスクを抱えているのです。
特に事業リーダーは、立場上、自らの悩みを他人に相談したり弱みをさらけ出したりできないことも多いものです。孤独な戦いが続くと心が折れてしまい、事業の成功を諦めてしまうことも少なくありません。実際、事業リーダーが自ら離脱を希望する理由は、新規事業自体の難度よりも「精神的・肉体的な疲労」や「社内政治・軋轢といった組織課題」によるものが大きいという調査結果もあります。
こうした事態を未然に防ぐには、イノベーター人材が課題を乗り越え、着実に事業開発を進められるよう支援する仕組みが不可欠です。IJMは、イノベーター人材がプロセス上で直面する課題を可視化するツールとして機能します。
横軸に「新規事業開発プロセス」、縦軸に「各プロセスのゴールやタスク」「チームの状態」「思考・感情・心理」、さらに「想定される課題」を列挙していきます。IJMを活用し、イノベーター人材が体験するストーリーと直面する壁をあらかじめ想定することで、適切なIRMを実践できます。的確な支援を通じて、Innovator Experience(イノベーター体験、挑戦者体験)を向上させていくことが求められるのです。



