成功する企業は「反応」ではなく「コミット」する
アリサン・アトヴァー氏は、心理療法家(サイコセラピスト)のバックグラウンドを持ち、行政機関のデザインリサーチャー(ニューヨーク)、サービスデザインコンサルタント(アトランタ)、サービスエクスペリエンスデザイン会社のシニアデザイナー(サンフランシスコ)を務めるなど、米国の各都市で多彩な経験を積んできた。現在はコペンハーゲンで製薬企業Novo NordiskのシニアUXデザイナーとして、ヘルスケア分野のユーザーエクスペリエンスデザインに取り組んでいる。
約10年にわたるこうしたキャリアを通じて、アトヴァー氏はずっと自身に問いかけてきた。
話題にのぼるようなサービスをつくって成功する企業は、そうでない企業と何が違うのか?
そしてプロジェクトに失敗・成功した人々の話を聞き、企業の行動を観察してきた結果、そういった組織にはパターンがあることに気づいたという。企業行動とは、単純化すれば、企業がなんらかの問題や危機に直面したら、なんらかのアプローチをとることであり、その結果生じるのがビジネスといえる。たとえば、立ち上げたサービスが顧客に支持されない、株価が下落する、競合にシェアを奪われるといった経営上の危機は、それに対して企業が反応する(リアクト: react)ことを促す。
アトヴァー氏の解説によれば、このような企業の「反応」は、リオーガニゼーション(組織再編:reorganization)、製品のリコール(recall)、サービスのリローンチなど(再開:relaunch)など、英語ではリアクト同様、Reで始まることばで表される対策が多い。しかし、イノベーティブな企業はリアクトだけで終わらせない。
(成功する企業は)その機会を捉えて、『コミットする』ことに気づきました。リアクションとは、押されたので押し戻すといったレスポンス、反応して行われる行為です。これに対してコミットメントとは、目的や活動に献身的に打ち込もうと決断すること。『コミット』した企業が、イノベーティブな企業と評されるのです。