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【出張版】スタートアップの時代の終焉

スタートアップの時代の終わり(そしてプロジェクトの時代)

第1回

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プロジェクトから成功するスタートアップを生むために

 プロジェクトであれば会社であるよりももっとリスクを取れます。だからこそ「スタートアップを始める」ことを勧めるよりも「プロジェクトを始める」ことを勧めたほうが、創業者や投資家にとってもっと良い選択肢になるのではないかと思います。

 特に以下の二点について環境を整えれば、さらに良いプロジェクトを増やしていけるのではないかと考えています。

  1. 素早く失敗できる環境を作り、一人あたりの挑戦回数を増やす
  2. まともな方法では勝てないからこそ、よりまともではないプロジェクトを行う

1.素早く失敗できる環境を作り、一人あたりの挑戦回数を増やす

 上の例は主に米国のものであり、一部の出資は助成金という形やコンテストの賞金という形で、投資家側のリターンを求めないものも多々あります。ただ、そうしたコンテストや助成金から様々なスタートアップが輩出されつつあるのも事実です。

 日本でもそうした狂ったアイデアを実行に移せるだけの、リターンを求めない少額出資がもっとあれば、プロジェクトが増え、そしてより良いスタートアップが増えていくのではないでしょうか。そして良いスタートアップが増えれば、長期的に投資家などにもリターンが回ってくるはずです。

 それに起業家を増やすことは並大抵の努力ではできないと思いますが、一人の起業家に何度も挑戦する環境を提供することはできるのではないでしょうか。そもそもスタートアップのほとんどは失敗するものです。であれば創業者個々人のビジョンだけは変えず、失敗を繰り返して方法を変えながらビジョンを実現することができる、一度失敗してもサポートを続けるような環境を整えることが、良いスタートアップと投資のリターンを生むことに繋がるのではないかと思います。

 実際に、多くの有名な起業家は歴史を持っています。そこから何度か這い上がって成功できたのは、失敗してももう一度挑戦できるからです。そしてそうした挑戦の絶対数こそが、USのスタートアップの成功を支えていると言っても良いのではないかと思います。

 また自分の周りでの挑戦と失敗の絶対数が多くなるにつれて、一人の一度の失敗が目立たなくなり、さらに多くの人が失敗できるようになるという循環があることも見逃せません。

http://fundersandfounders.com/author/anna-vital/http://fundersandfounders.com/author/anna-vital/

2.まともな方法では勝てないからこそ、よりまともではない「プロジェクト」を行う

 Sam AltmanやEv Williamsが言っている通り、恐らく次のスタートアップの注目分野はハードテックやディープテックと呼ばれている領域です。

Hard Tech is Back

Maturing markets = higher stakes, closing doors

Ycombinator

 これらの領域はスタートアップが解決するには大きすぎるかもしれませんが、しかし解決できた時のリターンも大きいと予想されるため、投資領域としての注目を浴びています。

 USの大学や私企業の様々なスタートアップ支援施設や教育プログラムを見てくる機会がありましたが、彼らもハードテック領域への投資を強めつつあり、そして日本よりも数倍の規模の支援活動や施設を整えています。そしてそれに取り組む才能の数も日本より数倍はいるでしょう。

 彼らとまともに戦えば、日本のスタートアップは量と質の両方で負けるのは必至です。

 だからこそ、新しいハードテックのような領域でも日本のスタートアップはよりまともではない、彼らよりももっと狂ったアイデアで戦う必要があります。こうしたハードテックの文脈であっても、真面目になってしまいがちな「スタートアップ」への支援や投資だけではなく、より狂うことのできる「プロジェクト」への支援を強めていくべきではないでしょうか。

 実際に、Facebook は会社にしようなんて思っていなかったとMark Zuckerbergは言っていたそうです。そしてTwitterやSlackはメインのプロダクトではない、サイドプロジェクトから生まれました。GoogleもYahoo!も大学院生のプロジェクトから始まっています。

 本当に世界を変えるプロダクトは、そうしたプロジェクトから生まれてくると言えるのではないかと思います。

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イノベーションの担い手としてのスタートアップは生き残り続ける

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この記事の著者

馬田 隆明(ウマダ タカアキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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