連載・コラム 【出張版】スタートアップの時代の終焉

スタートアップの時代の終わり(そしてプロジェクトの時代)

第1回

[公開日]

[著] 馬田 隆明 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] スタートアップ ベンチャー 事業開発

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改めてスタートアップのメリットを考える

 改めてスタートアップだけができて、他の企業ではできないことを考えてみると、以下の 3 つになるのではないかと思います。

  1. リスクの許容範囲が大きい
  2. 狂ったアイデアが実践できる
  3. スピード

1.リスクの許容範囲

 大企業や従来の企業は、これまで培ってきたブランドの価値などを守るために、文化的にまだ多くの人が受け入れられないであろうサービスなどはなかなか開始できません。一方スタートアップは文化的にまだ広く受容されないことをできます。

 たとえばAirbnbのようなことを旅行会社が2007年にはできなかったでしょう。それを行うには市場からの反発が想像でき、大きな文化的なリスクがありました。しかし当時小さなマーケットでも、それをとても欲しがる人たちがいて、その文化が広がっていくことでAirbnbは急成長を遂げました。そうしたリスクを取れるのがスタートアップです。

 またマーケットの成長性のリスクについても大企業よりスタートアップが得意とする分野です。大企業で優秀な人は、既存事業の大きな事業に回されるのが常です。なぜなら伸びるかどうかわからないマーケットで新規事業を成功させるよりも、既存事業を1%でも成長させたほうが会社への貢献は大きいからです。一方スタートアップは、自分たちが生き延びるのに十分な市場があれば参入できます。 こうした、またまだ伸びるかどうか分からない領域に飛び込むことがスタートアップの本来やるべきことであり、逆に言えば大企業がやれるようなことをしようとすると、それはスタートアップをする領域とはいえないのかもしれません。

2.狂ったアイデアが実践できる

 スタートアップは前述のようなさまざまなリスクを抱えたアイデアを実践できます。既存の企業は多くの場合はリスクを嫌いますし、仮に一人の上司が良いといったとしても、様々な承認プロセスがあることで高いリスクを持つものは排除されることになります。

 またスタートアップが狙うべき、狂ったアイデア今はまだ言語化しにくいアイデアであれば、なおさら既存企業で承認は通りません。

 一方で、スタートアップは不可能だと言われていることにも挑戦できます。おもちゃのようなものと言われようと、それを実践するのに最短の意思決定で行えるのがスタートアップです。

3.スピード

 イノベーションのジレンマの処方箋を実行するなど、大企業もその対策を行って事業のスピードを上げ始めています。それでもなお、スタートアップが勝てる部分はスピード、特に失敗のスピードではないでしょうか。

 事業のスピードそのものは大企業に敵わなくなっても、大企業ではいずれにせよ失敗はしにくい状況です。たとえば撤退するときにも、人事評価上、担当者は相当の覚悟をもって撤退する必要がありますし、また株式公開している企業は株主の目から嫌がります。

 スタートアップはそれらに比べて相対的に失敗がしやすい環境にあります。失敗したとしても影響を受けるのは少人数であり、小規模な金額です。

 そして失敗ができるということは、挑戦ができるということです。ビジョンを変えずに様々な挑戦をすることができる、というのがスタートアップのメリットではないかと思います。

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