リモートワークにつきまとう「漠然とした不安」を取り払う
こうした拠点同士をリモートでつないだワークスタイルの実践は、2006年の創業時に現副社長である西尾知宏氏が鳥取出身であったことから始まった。当時は“必要に迫られて”のことだったものの、予想以上にスムーズに業務が進み、社会的意義も大きいと考えたことから本格的に取り組むようになったという。
1つは地域活性化という観点です。地方でもリモートによる新しいワークスタイルで働けるとなれば、新たな事業として地域での雇用を生み出します。特に鳥取は人口が最も少なく少子高齢化が進行中という、ある意味で“日本の最先端”の地域。そこで成功したとなれば、他の地域へと横展開も可能でしょう。そしてもう1つはIT業界の人材不足を補うという観点です。私自身、かつては人材サービス業界にて、優秀なIT人材が様々な理由から首都圏を離れることになり、やむなく別の仕事に就いた例を多く見てきました。ロケーションフリーで働けることになれば、そうした人もキャリアを継続できます。(若山氏)
ロケーションフリーでの働き方が実現すれば、地方活性化とIT人材確保の両面に大きなメリットをもたらし、さらに地方に広がれば社会的にも大きな価値を持つ。しかしながら、LASSICの案件に限っていえば、まだまだ躊躇する決裁者も少なくないという。東京で同じオフィスで顔を合わせた状態で仕事をすることが望ましいというわけだ。そう、まさに障壁となっているのは決裁者の「漠然とした不安」だ。
まさにクラウドへの参入障壁と似ていますね。ITの仕組みとして絶対的なセキュリティは現実的にありえませんが、技術や仕組みに対してより、“直接会えないこと”に関する心理的な不安感を口にする方が少なくありません。(山下氏)
日本ではある意味美徳とも取られる“慎重さ”。しかし、世界的潮流としてロケーションフリーによるワークスタイルが当たり前となりつつあるなかで、日本もまた新しい働き方を追求しなければ、遅れてしまうのではないかと若山氏は言う。
グローバルでは、既に米国とインドが連携するなど、ロケーションフリーがごく普通の働き方になっています。それがもたらすスピードやコストメリットは、既に私たちにも恩恵として受けていますが、一部の部署だけ、企業だけでは十分とはいえません。組織全体、社会全体が普通に使うようになって初めて真価が得られるというものでしょう。日本企業が『同じ場にいること』にこだわりつづけている間に、差が開いていくことにもなりかねません。(若山氏)
しかしながら、どんなにメリットがあるとはいえ、心理的にも物理的、仕組み的にもすぐにシフトチェンジすることは容易なことではない。そこで、LASSICが実践をもって顧客や関連企業の心理的障壁を外しつつ、さらには自らをラボとして確立した仕組みやノウハウをソリューションとして、ロケーションフリーを目指す企業に提供していくことも考えているという。
中核都市を中心にゆくゆくはそれ以外の都市にも広げ、Uターン人材の他、現地採用でリモートによる教育も行いながら、拠点とメンバーを増やしていきたいと考えています。目標は2020年に50地域で1000人規模にすること。現在、各地域からいろいろと問い合わせをいただいており、そうした地域連携も含めて精力的に展開していきたいですね。(若山氏)