「禅」と「ネットワーク」の共通項から見えてくるもの
藤田:
私は禅を考えるときにも、ネットワークという視点が重要だと考えています。たとえば、これまで話の中で出てきたものについて、共通しているものといえば、すべてネットワークであることですよね。サイズが違うだけで、脳も人間の体も、組織も、環境も…。
入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
なるほど、確かにそうですね。
藤田:
ネットワークは「働きのシステム」ですよね。モノが単にばらばらに並んでいるのではなく、その間に情報の流通が絶えずあって相互に影響し合っている。単独で勝手にやっているものはない。私たちはそれをニューロンだったり、人間だったりと単位で分けていますが、もともと宇宙が1つの卵から生まれたのだとしたら、そこに基本的な共通性があってしかるべきです。いわゆる「フラクタル構造」だと考えられるでしょう。仏教だと「一即一切」と言っています。部分の中に全体があるということですね。
佐宗:(biotope 代表取締役社長)
まさに、前編で私が話した「社会構成主義」もフラクタルが前提でした。自分が変われば周囲も変わる、自分を変えるためには「エゴ」との付き合い方がとても大切なんだと。
藤田:
エゴをなくすというよりは、エゴについての誤解を解消すればいいんじゃないですかね。たとえば、天動説から地動説にパラダイムシフトしても地球そのものは何も変わらない。ただ、われわれの理解の仕方がより現実に近くなっただけ。でも、見えてくるものの意味合いが全く違ってくるんですよね。エゴというものがどういうものなのか、その正確な正体を見極めればいいわけです。そうすれば、生き方が変わってくる。
入山:
エゴの正しい在り方というのは、どのようなことを指すんですか。
藤田:
まずは、それが大きなネットワークのごく一部であることを認識することでしょうか。多くの人が認識する自分=「エゴ」というのは、宇宙という無限大の流れから離れて孤立的にその上に浮かんでいるような状態なんですよね。それが本当は全体と切り離せないあり方をしていることを洞察することが必要です。相互浸透(inter-penetration)というのですが。
入山:
なるほど、つまり、禅はそのつながりを見出すための方法なんですね。