藤田一照氏が最後に投げかけた本連載への期待
藤田:
岡潔さんという素晴らしい数学者をご存知ですか。彼が晩年の講演で「心は二つある」と語っています。第一の心は「私というものを入れないと動かない」、つまりは意識を通さないと動かない我々の日常の心。そして第二の心は、「私というものを入れずに動く」、つまり「無私の心」だというんですね。これはいわば「情緒」なんです。西洋人は第一の心しか知らないが、日本人は第二の心をわかっていた。しかし近年は西洋の影響で、第一の心しかわからなくなっているのではないかと警鐘を鳴らしています。
入山:
まさに先ほど出てきた仏教の心の持ち方と同じですね。でも、少しずつ西洋にもそうした心の捉え方が生まれてきていますね。