キャンバスで競業者をパートナーに替え、社会イノベーションを起こしていく
紺野氏に続き、日立ソリューションズのプロダクトソリューション事業部で製品企画、マーケティングに従事する松本匡孝氏が、建設業界向けのサービスを例に、ビジネスモデル・キャンバスを使った同社のイノベーションの試みを紹介した。
近年、建設業界では、現場、建材メーカー、工務店の担当者どうしの緊急の連絡などに、スマホでも使える 利便性などが評価され、ソーシャルメディアのLINEが活用されている。こうしたフリーミアムサービスを業務に取り入れつつある客先のビジネスモデルの変化に対応するため、日立ソリューションズでは、自社の事業を再認識するために、ビジネスモデル・キャンバスを使って、新たなビジネスモデルの開発に取り組んだという。
まずは、「現状分析」である。既存ビジネスモデルでは、ユーザーエクスペリエンスからエンジニアリングまでを網羅していた「主要活動」ブロックの一部をフリーミアムサービスに奪われ、製品が売れなくなってしまう。とはいえ「顧客が課題解決にフリーミアムモデルも選択肢とする」という流れは今後も続くと思われる。そこで日立ソリューションズでは、フリーミアムサービスを「パートナー」ブロックに移し入れて、「LINEの使用を前提としたうえで、日立ソリューションズの強みを活かした顧客の課題解決に貢献できるサービスとは何か」を模索していった。
その結果、ユーザーインターフェイスの部分はLINEに任せ、同社の得意なエンタープライズ機能をそこにアドオンするというモデルが描き出されてきた。たとえば、LINEでは通常、建設業界でやりとりが必要な図面ファイルなどは容量が大きすぎて転送できないが、同社の多重化通信技術、セキュリティ技術を追加すれば、そうしたギガクラスのデータも認証をかけて、安全に送ることが可能になるというわけだ。
同様のモデルは、同社が注力する社会イノベーション事業にも適用できる。たとえば、ソーシャルメディアを通じて多くの人々の行動に関する情報を安全に集めれば、電力使用量予測の精度を上げ、スマートグリッドなどの整備もいっそう進められる。松本氏は、「ソーシャルメディアという20億人規模のユーザー基盤と連携することで、社会インフラを変え、社会イノベーションを起こしていく、これが日立の目標です」と同社の今後の抱負を語った。