長文メールはNG、数字勘のない人は取り残される
浜野:
ご著書では、資料の作り方とか会議のやり方などについて書かれていますが、通常のハウツー本とは違った、かなり血の通った方法だと感じました。
三木:
ソフトバンクで徹底的に鍛えられたのは、「数字勘」を磨くこと。データからボトルネックを見抜き意思決定を行うこと、シンプルな資料を作成するためのツボなどです。
孫社長は2001年の通信事業をはじめた時から「回帰分析をしないやつの話は一切聞かない」と言っていたほどです。特に営業のフローについては、歩留まりや成約状況を分析シートで管理することでした。
孫社長が資料に求めることはすごく明快です。基本的に資料は、交渉して相手が納得して動くというのがゴール。とにかく人の気持ちが動いて、何かアクションに結びつくものでないと意味が無い。
大事なのは、データとナレッジとインフォメーションが違うということです。
例えばあるお店の今月の売上が100万円だとすると、それはデータ。それを月次推移にするとインフォメーションになる。それをさらに分析していって、例えば7月から低下した理由は、「近くに低価格の競合店舗が出てきたから負けているようだ」まで分析すると、ナレッジです。そうすると何をすべきかがある程度分かる。
浜野:
コミュニケーションは、メールより電話が多かったようですね。
三木:
ソフトバンクでは、孫社長の3行以上のメールを見たことがありません。用事があったら電話がかかって来ます。電話会議を頻繁に利用していました。
世界中どこにいようが、何時だろうが、必要だったら電話がかかってくる。「この数字はどうなっている? 今からこれをやろうと思うが、それで良いか」と。そこで即答できないと、ソフトバンクの幹部としてはアウトです。会議に呼ばれないし、主要なポストから外れていく。
メールは、色々な人の話を点々とつないで行って、誰が最新バージョンか分からなくなる。読んだのかも分からないし。コミュニケーションのチャネルは2人だと1本ですが、10人になると45本もある。
それに対して電話やビデオの会議で皆が話せば、いっぺんに終わります。
オンライン営業など、ビジュアルコミュニケーションツールの使い道が広がっている。
浜野:
現在オンライン教育の事業をされていますが、デジタルツールをどのように活用されているのでしょうか?
三木:
今のところはWeb会議ツールを使っています。当社は「TORAIZ」という1年で英語をマスターできるプログラムを提供しているのですが、これは生徒一人ひとりにバイリンガルの日本人プライベートトレーナーとネイティブ講師の2人を付け、英語力を徹底的に鍛えるというものです。
拠点が東京で4箇所、大阪で1箇所あり、拠点ごとの状況を常に把握するために、週次でセンター長会議をしています。そこでレポートして、獲得目標や獲得状況により、人員配置などをリアルタイムで行います。
浜野:
われわれブイキューブでは、Web会議システムなどのビジュアルコミュニケーションツールを提供しています。Web会議というと、拠点間会議のイメージがありますが、オンライン営業やWeb面接などの分野で伸びています。
三木:
そのようなツールは効果的ですね。当社でもWeb会議による無料カウンセリングをしています。普通だと物理的にこちらに来てもらうこともあるのですが、遠方の人とオンラインでカウンセリングをするのは、お客様を獲得し、維持する上で非常に役に立ちますね。つまりデジタルによる無料カウンセリングというのは実は、営業プロセスの非常に有効な手段なのです。
浜野:
それがまさにオンライン営業の一つだと思います。Sansanさんやビズリーチさんなどが弊社を使ってくださっていて、オンライン営業だけで膨大な数の商談をこなされています。セールス部隊にお邪魔すると数十名の体制で、問い合わせに対して即座にフォローコールをかけ、その後オンライン商談に移行していました。サポートとフォロー体制も素晴らしく、見ていて感動を覚えました。
三木:
営業プロセスがそれだけ高速になっているということですね。うちもネイティブ講師との面接はオンラインで行っています。毎月、100人近くと面接しています。海外に住んでいる人との面接も多い。
浜野:
中途採用のスタイルも変わってきていて、就業時間のすきま時間にスマホなどでWeb面接に臨む人も増えています。こうしたツールとWeb会議が働き方改革でも生かせるといいのですね。
【ブイキューブのオンライン営業事例】
株式会社ビズリーチ
「電話営業から訪問」では40日かかっていた契約までのリードタイムがV-CUBE セールス&サポートの「オンライン営業」で17日に短縮