ジョブを見極める4つの要素
ジョブとは顧客が「やらないといけない」ことや「やりたい」ことなのだが、その顧客が置かれた状況がジョブに強い影響を与え、ジョブの強さを左右する。そのため、顧客のジョブを理解するには単に「ジョブ」だけでなく、その「目的」やジョブを妨げる「障害」、現状の解決策である「代替解決策」という4つの要素を把握しておきたい。4要素のうち、最初の2つはあまり状況に依存しない。人が本来やりたいことはさほど変わらないからだ。変わらないものの、人のやりたいことは複雑で見えにくい。気持ちの問題や周りの目を気にして「やりたいこと」が変わることもある。後者の2つは顧客の置かれた状況そのものと言っても構わない。どのようなシチュエーションでジョブが発生したり、強くなったりするかを説明する因子である。
ジョブにも目的がある
通勤客にとって、ミルクシェイクは退屈しのぎであり、父親にとって、ミルクシェイクは親としての気分を味わうために雇われていた。さらにジョブの目的も考えてみたい。なぜ通勤客は退屈しのぎをしたいのだろうか?
退屈が嫌な理由なんていらない。なぜなら気持ちの問題だからだ、との反論をされるかもしれないが、実は的を射た反論である。感情的なジョブを解決するには、感情が満たされないといけないのだ。「楽しく」とか「ワクワク」、あるいは「興味深く」などと、喜怒哀楽につながるような解決策が求められている。ジョブの目的をとらえる意義は、ジョブの解決策と強く結びついている。
例えばクルマの解決するジョブを考えてみよう。すると、機能的ジョブとして、単に「移動したい」というものや、感情的ジョブとして「爽快感を味わいたい」、社会的ジョブとして「センスがいい」と思われたい、といったものが挙げられる。
仮に人の「移動したい」というジョブを解決する際には自家用車以外にもタクシーや公共の交通機関などと比較した上で本人にとってベストな解決策を選ぶことになる。「爽快感を味わいたい」というジョブの解決には、タクシーは選ばれることはないが、バイクやジェットスキーなどは候補になるであろう。つまり、機能的なジョブは他の機能的な解決手段と、感情的なジョブは他の感情的な解決手段と「競合」する。競合する手段よりも優れていないと、人は新たな解決方法を選ばない。ジョブ理論の発展に貢献した“JOBS TO BE DONE”の著者アルウィック氏によると、既存の解決方法よりも少なくとも20%以上優れていないと顧客に見向きもされないという。ピーター・ティール氏に至っては改善の度合いが10倍以上であることが大切だという。どのような新しいアイデアも既存の解決策よりも著しく優れたものにすることを心得たい。
機能・感情・社会という3種類のジョブは、ジョブの目的に応じた分類である。機能的ジョブは「どう為し遂げるか」という観点で顧客に評価され、感情的ジョブは「どう感じるか」、社会的ジョブは「どう見られるか」で評価される。ジョブの目的を理解することで、競合する解決手段の問題点や優劣を把握することができる。