10年前に突きつけられた「社内からの問い」と類似特許検索の誕生背景
ダイキン工業の伴走型知財組織の原点は、約10年前、2015年に設立された総合研究開発拠点「テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)」の発足時にまで遡る。当時、社内から「各技術開発における特許出願のKPI(重要業績評価指標)を構築したい」という強い要望が突きつけられていた。
しかし、同社のコア事業である空調分野と化学分野において、精緻なKPIを測定することは容易ではなかった。一見すると他の技術と明確にセパレートしているように見えるが、たとえば家庭用・業務用のエアコン技術と、冷凍冷蔵庫などの冷凍機技術は極めて類似している。単純なキーワード検索や特許分類(FI/F-termなど)による検索式では、膨大な類似技術がノイズとして混入してしまい、その都度、手作業による膨大な分類作業が発生していたのである。
自分たちの出願を種(シード)にして、類似の技術を自動的に集めてくれる仕組みがあれば、非常に助かる。この切実な現場の課題を解決するため、同社は特許分析プラットフォームを提供するPatentSight(パテントサイト)社に類似特許検索技術の共同開発を打診した。現場の実務家としての細かなニーズを真摯にぶつけ、試行錯誤を繰り返すことで、現在パテントサイトに標準搭載されている高度な類似特許検索機能が形作られたのだ。
外部指標と社内評価の強い相関が判明した
こうして客観的なデータ分析基盤を整えた同社だが、客観的な知財分析スコアが本当に企業の競争力や技術力を正しく反映しているのか、という点については常に検証を怠らなかった。
その成果として安部氏が示したのが、同社が3年連続で受賞した「Innovation Momentum: Global Top 100」(世界で最もイノベーティブな企業100社)のデータ分析である。パテントサイトの指標を用いて、ダイキンの空調・化学分野それぞれの特許ポートフォリオから、評価の高い特許を抽出。これらを、ダイキンが独自に実施している出願時の「社内評価(社内表彰など)」の結果と突き合わせるという検証を行った。その結果、パテントサイトの指標と社内評価に強い相関があることが判明したのである。
「客観的な外部スコアと、我々の社内評価の間に強い相関が出たことで、社内の評価基準の妥当性が証明されました。と同時に、パテントサイトの提示するスコアが、自社の知財戦略や競争力を見極める上で極めて信憑性の高い、活用可能性のある指標であるという確信を得ることができました」と安部氏は安堵の表情を交えながら、データ裏付けの重要性を強調した。
