人的資本経営の重要性が叫ばれる一方で、現場の声が経営に届かない、あるいは経営の意図が現場に伝わらないという課題を抱える企業は少なくない。株式会社U-ZEROは、2026年7月10日に記者会見を開催し、国内のビジネスパーソン2,060人を対象に実施した組織の実態に関する調査結果を発表した。同調査からは、過半数の職場で従業員が本音を口にできず、意見がどこにも流れていかない「沈黙の組織」と化している深刻な実態が浮き彫りになった。本稿では、同社代表取締役CEO兼CPOの三村真宗氏による調査結果の解説を中心に、日本企業が抱える構造的な課題と、従業員の行動変容を促すための要件についてレポートする。
過半数の社員が「言っても無駄」と諦める沈黙の組織の実態
U-ZEROが実施した調査によると、会社に対して「何を言っても無駄」と諦めることがあると回答した従業員は54.7%にのぼった。従業員は決して意見を持っていないわけではなく、声を上げる前から諦めている状態であることが示唆されている。
同社は、経営層が従業員の声を聴き、動き、返すという「VoE(Voice of Employee)サイクル」と、「フィードバック文化」の有無という2つの軸で組織を4つのタイプに分類した。大企業に勤務する社員の回答結果では、意見が上司にも同僚にも伝わらず、声がどこにも流れていかない「沈黙の組織」に属していると回答した割合が65.5%を占める結果となった。これは、互いに意見を言い合える「高め合う組織」の17.0%を3倍以上も上回る数値である。
従業員の本音を止める要因として、調査では同調圧力を生む「和を乱す空気」、対話を減少させる「察して欲しい文化」、そして役職意識が高いほど本音が言いづらくなってしまう「職位へのこだわり」という3つの壁が指摘された。
形骸化する「VoEサイクル」と経営理念のお題目化
従業員の本音を引き出し、組織の硬直化を防ぐためには、集めた声を経営判断や組織改善につなげる縦の声の循環、すなわちVoEサイクルの確立が不可欠である。しかし、今回の調査ではこのサイクル自体が形骸化している実態が明らかになった。従業員から見た会社の対応として、声を聴くが44.2%、動くが42.2%、変わるが40.9%、理由を返すという理由説明が37.7%にとどまり、サイクルのすべてのプロセスが半数に届いていない。声を集めるだけで終わらせる、あるいは意思決定の理由を現場に説明しない姿勢が、現場の無視疲れを引き起こしている。
このような縦のコミュニケーションの目詰まりは、経営層からの発信の受け止め方にも影響を及ぼしている。調査結果では従業員の51.7%が「経営理念はお題目に過ぎない」と感じており、掲げられた理念と日々の行動の間に大きな距離があることがわかった。
経営の思いと現場の実感の間に生じたギャップが、企業変革を阻む要因となっている。この課題を解決する鍵として提示されたのが、経営陣が自身の言葉で語りかけることの重要性である。調査では、経営陣が自らの言葉で語っている会社ほど、経営陣への尊敬の念や心理的距離の近さ、そして自社の成長実感が有意に高いことが示された。経営陣を尊敬しており、かつ距離が近いと感じている組織では、自社の成長実感が高い割合が80.8%に達している。一方で、経営陣が自らの言葉で語らず、尊敬もされておらず距離も遠い組織では、その割合はわずか29.4%に落ち込む。
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