「電柱と同じくらい街中に置きたい」。自身の強烈な原体験から生まれた新規事業
椿:本日はよろしくお願いします。まずは、山下さんが展開されている「ReCute」がどのようなサービスなのか教えていただけますか。
山下:ReCuteは、外出先の女性のお化粧室などで、アプリを使っていつでもヘアアイロンが借りられるレンタルスポットです。イメージとしては、モバイルバッテリーの「ChargeSPOT」や電動キックボードの「LUUP」のヘアアイロン版ですね。
椿:今はどれくらいの規模で展開されているのでしょうか。私も渋谷のヒカリエでお見かけして「これはいいな!」と感動しました。
山下:ありがとうございます。現在は渋谷のヒカリエさんなどを中心に、約90施設、150台以上を展開しておりまして、アプリのダウンロード数は13万を突破したところです。
椿:すごいですね! なぜこの事業を始めようと思ったのですか?
山下:私自身が常にヘアアイロンを持ち歩いている人間だったからです。髪の巻きが取れやすい上に、前髪をすごく気にするタイプで……。でも、アイロンを持ち歩くのって重くて本当に大変じゃないですか。「電柱と同じくらい、街中にアイロンが置いてあればいいのに」と本気で思っていたんです。「自分がとにかく欲しかったサービス」というのが一番の原点ですね。
椿:最近は小学生から前髪へのこだわりが強いですが、それは社会人になっても続きますよね。女性にとって根深くてライフタイムバリューの長い課題だと思います。
「外で前髪を巻くニーズある?」社内コンテスト最下位からの大逆転劇
椿:この事業は、NTTドコモの事業プランコンテストに応募してスタートしたのですよね。
山下:はい。「docomo STARTUP」という制度です。毎年300ほどのアイデアがエントリーされ、VCからリード出資を獲得できないとスピンアウトして起業することはできないという厳しい制度でした。また、Demoday(成果報告会)に行けるのは、5チーム程度でした。
椿:Demodayの時点での評価はどうだったのですか?
山下:実は、我々のチームはDemodayで一番評価されていなかったんです。年上の男性からは、「前髪を外で巻くなんてニーズあるの?」「市場規模がニッチすぎる」と言われ続けました。そしてある年の1月、ついに「事業中止」の通達が来てしまったんです。
椿:そこからどうやってVCからの資金調達を?
山下:「3月に外部のピッチコンテストに出る予定があるから、そこまでの稼働は許してほしい」と食い下がりました。
椿:すごい執念ですね!
山下:期限の1週間前になんとかポーラ・オルビスホールディングスさんからの投資を決めて、その結果を示してドコモを説得するような形でした。期待されていなかったチームが調達してきて、会社も驚く“大逆転劇”だったと思います。
椿:諦めない力が道を切り拓いたのですね。ビジネスとしての華々しいスタートダッシュのように見えますがいかがでしたか。
山下:本当に死に物狂いでした。そして何より、無事にスピンアウトを決めた後にも、今まで経験したことのないような壁が待っていたんです。
