“人工生命的”組織変革──組織全体ではなく小さなユニットの「結びつき方」を変える

ゲスト:株式会社オルタナティヴマシン代表取締役青木竜太、岡瑞起、最高科学責任者池上高志氏 第3回 

 本シリーズでは、2007年の創業時から新しい経営方法を追求してきたダイヤモンドメディア株式会社の武井浩三代表取締役と、イノベーティブで協働的な組織のあり方とその実践について研究を行う宇田川元一氏(埼玉大学 准教授)が、これからの組織とそこに近づく方法について様々な方と語り合う。今回は人工生命(ALife)の研究者集団オルタナティヴ・マシン(Alternative Machine Inc.)の創業者3名を迎え、生命を作るという研究を通して何が見えてくるのか、そこから組織や社会を見るとどのようなことが言えるのかを語り合った。対話の後半では、人や組織の関係性が競争から協調へと変化しているという認識が共有され、価値観が大きく変化する時代だからこそのストーリーの重要性が語られた。全4回でお届けする。今回は第4回。

[公開日]

[語り手] 池上 高志 青木 竜太 岡 瑞起 宇田川 元一 武井 浩三 [取材・構成] やつづかえり [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] AI・機械学習 ワークスタイル 事業開発 組織開発 ホラクラシ― 人工生命 Alife 複雑系

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PLには表れない、会社に重要な資産を作れる人が高く評価される仕組み

宇田川(埼玉大学 人文社会科学研究科 准教授):
 ダイヤモンドメディアの場合、世間では「モチベーションを上げるもの」とされるものも、敢えて取り除いてきたんじゃないですか?

武井(ダイヤモンドメディア株式会社 代表取締役 共同創業者):
 そうですね。この仕事をしたらボーナスがいくらみたいな外発的動機にもとづくインセンティブも一切ないので。

青木(株式会社オルタナティヴ・マシン[Alternative Machine Inc.]):
 内発的動機づけみたいなものは考えられているんですか?

武井:
 いや、それもないんですよ。「内発的動機づけが大事だから、それをやりましょう」と、外発的に動機づけしようとするのはおかしい、というのが我々の考え方です。

岡(株式会社オルタナティヴ・マシン代表取締役/筑波大学システム情報系 准教授 工学博士):
 武井さんの会社では、クライアントがいるんですよね。上司は命令しないけれども、クライアントの要望にどう答えているのですか?

武井:
 みんながお客さんの方を見て、お客さんに対して行動を最適化しているという感じです。普通のヒエラルキーの会社だと、下の人の行動は上の人の命令によって、経営者の行動は株主によって制限されるわけですが、それはおかしいと思っていて。

池上(株式会社オルタナティヴ・マシン最高科学責任者/東京大学大学院総合文化研究科 教授 理学博士):
 でも、大学院で研究をやっていると、研究者でも学生でも何か仕事を与えてほしいという人がほとんどですけどね。そんなに自発的にものを考えて動ける人はいない。それは何故かというと、安心がないから。そして、何が面白いのかということの経験がないというのもあるんじゃないですかね。

宇田川:
 確かに、ダイヤモンドメディアは“よい意味”で誰でもが働ける会社ではないと思います。一方、安心という観点でいうと、給与体系としてベーシックインカムみたいなものもあるんですよね?

武井:
 ベーシックインカム的に手厚く保障する部分と、変動する部分があって、変動部分は株式市場のような相場で決めるという仕組みです。普通の会社の給与システムは、PL(損益計算)に基づいて作るんですけど、我々はB/S(貸借対照表)に基づいて決めるんです。その人が会社にいることで、会社の資産をどれだけ作れるかということが一番重要だと思っていて。

岡:
 それはどうやって測るんですか?

武井:
 数値化できないので、一緒に働いている仲間の相互評価というか、話し合って決めていきます。PLの観点は定量化しやすいし、アウトソースしやすいんですよね。今の世の中って、クラウドソーシングなどを活用すればコストを抑えることは可能なので、PLに表れる仕事の価値が目減りしてきていると思うんです。ただ、会社にとって重要な「資産」や「価値」を産む仕事はアウトソースしにくい。例えばソフトウェアみたいな無形資産もありますし、決算書上に載らないようなマネージメントの仕組みを作ったり、ビジネスモデルを強化したり、あとはその人がいることでなんだか仕事が楽しくなるとか、うちの会社ではそういうことが、給料が高い理由になるんです。

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