顧客のジョブをイノベーションのインプットにする──アイディア先行型では難しい理由

「顧客のジョブ」から考えるイノベーション:第1回

 昨年より、ジョブ理論(Jobs To Be Done Theory)が日本において大きな注目を浴びるようになってきました。本連載では、「顧客のジョブ」というレンズを通じてイノベーションを再考することから始め、イノベーションプロセスに基づくジョブ理論の実践、さまざまな事業領域(プロダクト/サービスのデザイン/開発から購買経験の向上まで)への活用について考察していきます。また、従来マーケティング領域を中心に活用されてきた「ペルソナ」との違い、ジョブ理論と同じく大きな関心を集めているデザイン思考との融合についても解説していきます。さらに、今後起こり得るデジタルトランスフォーメーションにおけるジョブ理論の活用、外部組織との共創によるオープンイノベーションを含むICoE(イノベーションセンター・オブ・エクセレンス)の活動についても触れていきます。

[公開日]

[著] 白井 和康

[タグ] デザイン思考 ジョブ理論 顧客のジョブ

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「顧客のジョブ」を中心にイノベーションを推進する

 皆さんは、所属する組織内でどのような役割を担っていますか(イノベーション/事業戦略、プロダクト/サービスのデザインまたは開発、マーケティング、セールス/顧客サービス、R&Dなど)。あるいは、皆さんが日々取り組んでいる事業機会は何でしょうか(中核市場の成長、関連/隣接市場への拡大、新規市場の発見、既存市場の破壊など)。

 次に、皆さんの企業(または組織)において、以下の質問に回答することができる全社的なコンセンサスや合意が存在しますでしょうか?

  • イノベーションをどのように定義/位置付けていますか?
  • イノベーションを推進する組織/部署はどこにありますか?
  • イノベーション活動のプロセス(インプットとアウトプットを含む)をどのように定義していますか?
  • ターゲットとする市場/顧客をどのように定義していますか?
  • 顧客ニーズ/課題をどのように定義していますか?
  • 顧客ニーズ/課題を収集する共通フォーマットはありますか?

 本連載では、「プロダクト/サービス」ではなく、「顧客のジョブ」というレンズ(視点)を通じて市場、ニーズ、競合/代替分析、ニーズベースによるセグメンテーションとプロファイリング、ポジショニングとプロダクト/サービス戦略、価値ベースによるプライシングを定義し、最終的にはビジネスモデルのイノベーションの実現方法を検証していきます。そして、全ての部門(機能チーム)が顧客のジョブを中核に据えて連携していくことで、イノベーションをより予測可能に、マーケティングをより収益性のあるに変えていくでしょう(図1)。

 皆さんが、上記の質問に対して1つ以上の不明瞭なものがあれば、是非本連載を継続してお読みいただければ幸いです。皆さんの組織が大企業であろうとスタートアップであろうと関係はありません。必ず新しい洞察や日々の実践に関するヒントが見つかるでしょう。

顧客のジョブを中核に据えたチーム連携(図1)顧客のジョブを中核に据えたチーム連携

 最初に、イノベーションの本質的な意味について再考していきましょう。

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