第1回ではインダストリーX.0の世界観と、デジタル技術による創造的破壊がモノづくりに与えるインパクトについてお伝えした。企業を取り巻く競争環境はかつてないほどスピーディに進化しており、不確実性はさらに高まっていく。こうした中、特に製造業はこれまで強みとしてきたモノづくりの力や技術力だけではなく、顧客起点で提供価値を再定義する力が競争の源泉になりつつある。
製造業が「インダストリーX.0」時代で勝ち続けるためには、どのようなアプローチをとるべきか。第2回となる本稿では、経営モデル、製品、バリューチェーンを一から見直し、顧客への提供価値を再定義するアプローチとして「ビジネスデザイン」に焦点を当てる。また、多くのコンサルティング会社が、「ビジネスデザイン」において本質的な課題解決に取り組むための手法の一つとして、デザインシンキングを強化している背景についても解説したい。
「ビジネスをデザインする力」が、なぜ製造業に求められているのか?
従来、製造業におけるデジタル化への検討は、デジタルデータ主導の新しい売り方やアフターサービスによる「顧客経験軸」、もしくは既存の製品・サービスの社内オペレーションに関する「効率化軸」のどちらかで語られることが多かった。しかし、バリューチェーン全体にデジタル技術を取り込み、本質的な価値創出を狙ってビジネスモデルを転換するには、個々の取り組みではなく、両軸をあわせた検討が必須である。
図1.デジタルトランスフォーメーションのフレームワーク(アクセンチュア作成)
デジタルを活用した新しいビジネスモデルを創出するためには、「ビジネスデザイン」のアプローチが重要となる。「ビジネスデザイン」とは、(結果として)既存の製品・サービスの市場を大きく捉えた上で、顧客への本質的な提供価値を見極め、デジタル技術を活用してその価値を提供することだ。
図2.「ビジネスデザイン」の考え方(アクセンチュア作成)