場や生態系、コミュニティを“広義にデザイン”する、多摩川流域の未来を作る「TAMA X」とは

東京急行電鉄株式会社 小林乙哉氏×株式会社ビオトープ佐宗邦威氏対談:前編

 連載『デザインによる都市OSの変換』は、佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE)と小林乙哉氏(東京急行電鉄株式会社)の2名を鼎談ホストに、現在ターニングポイントを迎えている“都市のあり方”について、横断的な視点を持つ各界のトップランナーを迎えて議論を深めていく企画である。両者が取り組む「TAMA X(タマクロス)」の街づくりの事例などを起点に、本連載での都市に対する課題意識、どのような“フィルター”を通して都市を俯瞰してみるのか、などを話し合った様子を、2回に分けてお届けする。

[公開日]

[語り手] 小林 乙哉 佐宗 邦威 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] コミュニティ ワークスタイル 事業開発 企業戦略 サーキュラー・エコノミー

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建物を作る「都市開発」から、地域資源を活かした「都市デザイン」へ

佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer、以下敬称略):日本における都市づくりは、これまで不動産会社や鉄道会社が主体となって、郊外の住宅地開発や最近では都心部において大規模な都市開発という大きな流れがありました。しかし今後は人口構造も変化することもあって、都市開発のモデル自体が変わりつつありますよね。

小林乙哉氏(東京急行電鉄株式会社 課長補佐、以下敬称略):そうですね。僕は東急電鉄に入社後、渋谷の街のブランディングや、渋谷ヒカリエを企画から開発、運営まで携わったのちに、2015年から二子玉川ライズが完成したあとの街づくりを行なってきましたが、今、都市づくりはターニングポイントを迎えていると感じています。

今までは大きな土地を開発して付加価値を付けて人を呼び込むという方法をとってきましたが、もはや都心も郊外も開発されつくしているため開発できる「余白」が少なくなっているんですよね。

これからは、人が既に住んでいる場所を、より良く変えるフェーズに入っていきていると感じます。そうなると、大きな建物を作るという解決策だけでは新しい価値は提供できなくなってきています。

佐宗:そうですね。また、都市づくりに関わる人も変わってきていますよね。2013年にアメリカのシカゴに留学していたのですが、帰国前に欧州に行ったんです。そこで、フィンランドの政府系のファンドSitraでは、建築系のデザインファーム・ヘルシンキデザインラボとともに住民を巻き込みながらコミュニティの課題を見出し、それに対して建築家などが自治体や省庁に提案していく「参加型デザイン」の都市づくりを行なっていました*1。ロンドンでもNESTA*2、デンマークだとMindLab(マインドラボ)*3など、各地で似た取り組みが行なわれていました。

僕はプロダクトデザイン、サービスデザインよりもさらに広義のデザイン、つまり場や生態系、コミュニティという環境をデザインすることに興味があります。このような「広義のデザイン」は、コミュニティや地域と非常に相性がいいのではないかと思っています。そして実際にSitraやNESTAなどでは「広義のデザイン」が地域を巻き込んで実装されていくという現場を見て、とてもおもしろいと感じたんです。

佐宗邦威佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer)
イリノイ工科大学Institute of design修士課程修了。プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社(P&Gジャパン)でファブリーズや柔軟剤のレノアなどのブランドマーケティングを行い、ソニー株式会社クリエイティブセンターにて商品開発プロセス変革プロジェクトやグローバルカスタマーインサイト部門の立ち上げ、グローバルエスノグラフィープロジェクトの全社導入を担当したのち株式会社biotope設立。生態系、コミュニティという環境をデザインすることに興味を持ち、企業や団体のイノベーションをプロデュースする仕事を行なっている。

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