「作業効率」と「付加価値」という、2種類の生産性を混同してはいけない
佐宗邦威氏(以下、敬称略):村瀬さんと小林さんは現在、多摩川河川敷でキャンプ用品を使ったオフィスで仕事をし、夕方にはみんなで食事&焚き火を囲み、終電までには帰れるプランを提供する「CAMPING OFFICE TAMAGAWA」事業を手がけていますよね。なぜ村瀬さんはキャンピングオフィスを始めたのですか。そしてどんな魅力があるとお考えでしょうか?
村瀬亮氏(以下、敬称略):私は愛知県岡崎市で、ITを活用した企業活性化のためのコンサルティング会社を経営しています。数年前に「地方創生」や「働き方改革」が叫ばれ始めたときに、IT企業はそれに貢献できると考えました。パソコン1台持って通信環境があれば、仕事ができますからね。
まずは、自分がどこでも働けることを証明してみようと思い行動に移しました。3年半前の4月、高知県の土佐山にスノーピークの商品をたくさん持っていき、タープを張って机をセッティングしてキャンピングオフィスを実践してみました。それが、非常に良かったんです。
生産性には、「作業を効率よくやる生産性」と「よりクリエイティブで価値の高いものを生み出す生産性」があると思っています。前者に適しているのはオフィスなど室内で働くことですが、後者は自然の中に身を置くと効果的だとわかったんです。自然の中で、五感に健全な刺激を与えられたほうが、よりクリエイティブでいろいろなことを思いつく。また、明日のことを思いつくよりも、未来を考えることに適している。10年後、20年後、子ども達の未来などを、臨場感をもって正しく判断できると感じました。
小林乙哉氏(以下、敬称略):人間は思っている以上に、周辺の環境から影響を受けていると思います。僕が20代の後半ぐらいの頃は、都心で缶詰になって働いていました。そんなとき、数年ぶりに山に行ったら、緑の鮮やかさや空気の香りを感じて、“五感が急に動き出す感覚”がありました。自然がコントロールできない圧倒的な存在だからこそ、自分自身の内面や感性に向き合えるのではないかと。
今回、多摩川でキャンピングオフィスを開催するにあたって、事前にキャンプ場で仕事をしてみたんです。案の定、自分の中でさまざまな発想が浮かびやすくなるし、仕事に集中できると実感できました。
村瀬:共感します。会社の全員が創造性を発揮できるようになったら、組織は強くなるだろうと思っています。私も高知の土佐山でのキャンプから戻ってきて、社員とともに近くのキャンプができる公園で、キャンプ用品を設置して仕事をしてみました。すると、オフィスだったら出てこない発想が、多くの社員から次々と生まれたんです。これは良いぞと思って、スノーピークの社長に相談して、会社を作ることになりました。