人間が持つ創造力を呼び起こす「野生」とは──キャンピングオフィスを構える意味

ゲスト:株式会社スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役 村瀬亮氏【前編】

 連載『デザインによる都市OSの変換』は、佐宗邦威氏(株式会社BIOTOPE)と小林乙哉氏(東京急行電鉄株式会社)の2名を鼎談ホストに、現在ターニングポイントを迎えている都市デザインのあり方について、横断的な視点を持つ各界のトップランナーを迎えて議論を深めていく企画である。
 今回はキャンピングオフィスを提唱する株式会社スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役の村瀬亮氏をお招きして、キャンピングオフィスの可能性とその根底にある働き方への思いを議論した。内容を前後編に分けて紹介する。

[公開日]

[語り手] 村瀬 亮 佐宗 邦威 小林 乙哉 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークスタイル キャンピングオフィス

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「作業効率」と「付加価値」という、2種類の生産性を混同してはいけない

佐宗邦威氏(以下、敬称略):村瀬さんと小林さんは現在、多摩川河川敷でキャンプ用品を使ったオフィスで仕事をし、夕方にはみんなで食事&焚き火を囲み、終電までには帰れるプランを提供する「CAMPING OFFICE TAMAGAWA」事業を手がけていますよね。なぜ村瀬さんはキャンピングオフィスを始めたのですか。そしてどんな魅力があるとお考えでしょうか?

キャンピングオフィス「キャンピングオフィス」体験会での様子。(詳細は過去の記事から)

村瀬亮氏(以下、敬称略):私は愛知県岡崎市で、ITを活用した企業活性化のためのコンサルティング会社を経営しています。数年前に「地方創生」や「働き方改革」が叫ばれ始めたときに、IT企業はそれに貢献できると考えました。パソコン1台持って通信環境があれば、仕事ができますからね。

まずは、自分がどこでも働けることを証明してみようと思い行動に移しました。3年半前の4月、高知県の土佐山にスノーピークの商品をたくさん持っていき、タープを張って机をセッティングしてキャンピングオフィスを実践してみました。それが、非常に良かったんです。

生産性には、「作業を効率よくやる生産性」と「よりクリエイティブで価値の高いものを生み出す生産性」があると思っています。前者に適しているのはオフィスなど室内で働くことですが、後者は自然の中に身を置くと効果的だとわかったんです。自然の中で、五感に健全な刺激を与えられたほうが、よりクリエイティブでいろいろなことを思いつく。また、明日のことを思いつくよりも、未来を考えることに適している。10年後、20年後、子ども達の未来などを、臨場感をもって正しく判断できると感じました。

小林乙哉氏(以下、敬称略):人間は思っている以上に、周辺の環境から影響を受けていると思います。僕が20代の後半ぐらいの頃は、都心で缶詰になって働いていました。そんなとき、数年ぶりに山に行ったら、緑の鮮やかさや空気の香りを感じて、“五感が急に動き出す感覚”がありました。自然がコントロールできない圧倒的な存在だからこそ、自分自身の内面や感性に向き合えるのではないかと。

今回、多摩川でキャンピングオフィスを開催するにあたって、事前にキャンプ場で仕事をしてみたんです。案の定、自分の中でさまざまな発想が浮かびやすくなるし、仕事に集中できると実感できました。

村瀬:共感します。会社の全員が創造性を発揮できるようになったら、組織は強くなるだろうと思っています。私も高知の土佐山でのキャンプから戻ってきて、社員とともに近くのキャンプができる公園で、キャンプ用品を設置して仕事をしてみました。すると、オフィスだったら出てこない発想が、多くの社員から次々と生まれたんです。これは良いぞと思って、スノーピークの社長に相談して、会社を作ることになりました。

村瀬亮村瀬亮氏(株式会社スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役)
愛知大学卒業後、証券会社やキーエンスを経て、ITを活用した企業活性化のためのコンサルタント会社として有限会社アイ・エス・システムズ(現ハーティスシステムアンドコンサルティング)を1999年に設立。数多くの企業のコンサルティングを行う過程で、企業の成長に重要なのはIT技術そのものよりも、そこにかかわる人と人との関係であると気づく。そして、まるでキャンプをしているかのように、人と人が心を通わせ、分け隔てなく意見を交わすことができ、人間らしくワクワク働けるようなオフィス環境や空間を作ることが、人々の関係性作りに大きく貢献できると考え、2016年7月に株式会社スノーピークと共同出資でスノーピークビジネスソリューションズを設立し、社長に就任。

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