買い手と売り手の期待ギャップ調査から見えてきたこと
「営業組織はどう変わるべきなのか」。この問題を考える時に最も重要なことは、 買い手である顧客の視点です。そもそも買い手から見ると、売り手であるセールスはどのように見えているのでしょうか。そして、買い手はセールスに何を期待しているのでしょうか。
弊社パートナーの調査機関CSO Insightsは世界の営業組織に関するさまざまな調査を10年以上にわたり行ってきました。2018年の調査*2では、買い手が何を売り手に期待しているのか、どう関わっているのか、売り手のどこを見ているのかなどについて、興味深い結果が出ています。
買い手が自社の課題を解決するときにまず頼りにするのは?
何か困ったことがあったときに最初に頼る相談先を、買い手に3つ挙げてもらったところ、 結果は下記の図1のようになりました。残念なことに、外部のリソースとしてのセールスはトップ10の中で下から2番目という結果になっています。これは何を示しているのでしょうか。
確実に言えることは、 買い手の方がずっと速いスピードで変化しているということです。買い手は「消費者」でもあります。昨今のITの進化によって、 店舗を一度も訪れなくても「消費すること」はいとも簡単にできます。常にWebサイトにアクセスでき、 詳細な情報を瞬時に得られる環境にいます。その利便性は、彼らのB to Bビジネスの購買行動にも影響を与えているのです。つまり、よりパーソナルタッチな選択肢が豊富にあり、購買までのプロセスも分かりやすく可視化され、そして即時に欲しいものが手に入ることが当然、という高い期待です。
それに対して、営業組織は変わることができていないのが現状です。時間が無いなど何かと理由をつけて変化することをためらい、あるいは目先の売上を失うリスクを恐れ、結果的に大きく掲げた「セールストランスフォーメーション (営業組織の変革)」の取り組みへのコミットメントは減退し、単なる現状の改善に終わりがちです。
例えば、同調査では次のような結果も出ています。「買い手はセールスにいつ連絡をとるのか」という問いに対して、70%の買い手は自分たちの課題・ニーズの特定をした「後」に連絡をし、 さらに約半分の44%は解決先まで特定しているといいます。さらに詳細を決める時になって初めて外部のセールスに連絡をするという買い手は20%もいたのです。言い換えると、買い手の購買プロセスの最後にセールスは登場しているという結果となったのです。これは何を意味するのでしょうか。買い手はセールスに対して、さほど大きな期待を持っておらず、単なるベンダーの一つと捉えているということです。最終的な手段を決めるときに現れるセールスは、どこも大差はないと考えていて、そもそも大事な相談を持ちかけないということを示唆しているといえます。売り手にとって実に厳しい結果と言えるでしょう。
- *1:田中道昭,「"生きるか、死ぬか"トヨタの危機感の正体」,プレジデントオンライン 2018.6.15
- *2:CSO Insights (2018) The Growing Buyer-Seller Gap: Results of the 2018 Buyer Preferences Study.