顧客の購買活動の変化やサブスクリプション型ビジネスの広がりにより、注目を集めるインサイドセールス。急成長企業はそれをどのように実践しているのだろうか。12月6日に行われたInside Sales Conference2018では、株式会社HDE水谷博明氏、株式会社セールスフォース・ドットコム鈴木淳一氏、株式会社マルケト弘中丈巳氏、株式会社ユーザベース西川翔陽氏が登壇。モデレーターの株式会社ビズリーチ茂野明彦氏とともに、QA方式でインサイドセールスの取り組みを紹介した。その内容を抜粋してお届けする。
そもそも、「インサイドセールス」とは何か。テレアポとの違い、商談におけるKPIなど
ビズリーチ茂野明彦氏(以降、敬称・社名略):もう既に登壇者のみなさんは様々な場で講演などされていますし、来場の皆さんが聞きたいことに答えるのが一番なので、今日はノーアジェンダです。寄せてもらった質問にどんどん答えていただこうと思います。良い質問がきています。
テレアポとインサイドセールスの違いは何でしょうか。テレアポからインサイドセールスに変化していくために意識すべきことは何だと思いますか?
茂野 明彦氏(株式会社ビズリーチ HRMOS採用管理事業部 ビジネス開発部 部長)
株式会社ビズリーチにてインサイドセールス部門の立ち上げ及び全社のセールスフォース活用を推進。数名規模だったビジネスマーケティング部を70名超の規模へ拡張し、商談提供数を4倍に。また、商談の「フェーズ管理」の導入などを通じ成約率を約2倍に引き上げるなど、生産性改革を実行。ビジネスマーケティング、インサイドセールスを兼務し全社のPipe genを担当後、現在はHRMOS採用管理事業部 ビジネス開発部 部長を務める。
株式会社ユーザベース西川翔陽氏(以降、敬称・社名略):お客様の時間に対して、高い価値を提供しようとする意識の大小がいちばんの差ではないでしょうか。また、テレアポを極めていく人はテレアポのスペシャリストだと思います。でもインサイドセールスは電話営業に関してはゼネラリストです。
西川 翔陽氏(株式会社ユーザベース セールス&マーケティングチーム マネージャー)
早稲田大学商学部卒業後、中国・インドを放浪し、ソニーに入社。本社経営企画部門を経て、メディカル新規事業の上市過程にて戦略立案・オペレーション構築に従事。東京大学 生産技術研究所にて勤務。
その後、SPEEDAユーザーの原体験からユーザベースに参画。法人営業、インサイドセールスマネージャー、マーケティングマネージャーを経て、セールス&マーケティングを統括。インサイドセールスは他の登壇者4名に助言をもらいながら2018年から育ててきた組織だと話す。ターゲットの範囲が広い企業としての立ち位置から自社の取り組みの説明を行った。
株式会社HDE水谷博明氏(以降、敬称・社名略):情報収集スピードと質に関して違いがあります。我々は情報を資産だと思っているので、インサイドセールスは単にアポとりをするだけではなく、KPIにもメールアドレスの取得数などを入れるほど情報収集を重視しています。収集した情報はマーケ施策にも使えるので、そこが違いですね。
水谷 博明氏(株式会社HDE Digital Intelligence Section Manager)
広告代理店/Webコンサル会社/ITベンダーにて、営業10年、Webマーケティング10年を経験。現在クラウドセキュリティベンダーである株式会社HDEにてインサイドセールスの立上げやデジタルマーケティングに従事。CRM/MA/インサイドセールスを駆使した「営業×マーケティング」を共存させた「営業3.0プラットフォーム」構築を行っている。セッションでは、社内のインサイドセールスの仕組みづくり、組織づくりをしてきた経験をもとに、ターゲットが明確な企業としての立ち位置から、HDEの取り組みを紹介した。
株式会社セールスフォース・ドットコム鈴木淳一氏(以降、敬称・社名略):提供する価値の違いですね。弊社ではアポからの商談化率を個人ごとに確認していますが、80%に近い率を維持しています。つまり、外勤営業にとっては空振り訪問が少ないし、お客様にとっても価値のある時間になります。そこまで質を上げていく点が違いですね。
鈴木 淳一氏(株式会社セールスフォース・ドットコム インサイドセールス本部 コマーシャル事業部 / スタートアップ戦略部 事業部長)
広告系ベンチャー企業の営業マネージャーを経て、2010年セールスフォース・ドットコムに入社。インサイドセールスのプレーヤーと外勤営業を行ったのち、現在はインサイドセールス部門の若手営業育成組織にて、首都圏中堅中小エリアを統括。世界で最も革新的な企業の成長を支える為、「量と質を兼ね備えた営業組織」構築とスタートアップ/ベンチャー企業への支援事業を行う。セッションでは、大規模運営の企業としての立ち位置から取り組みの説明を行った。
株式会社マルケト弘中丈巳氏(以降、敬称・社名略):意識する範囲が違うと思います。テレアポはインサイドセールスの仕事の一部であり、インサイドセールスはマーケティングとフィールドセールスの橋渡しをするような存在ですね。
弘中 丈巳氏(株式会社マルケト 営業本部 コマーシャル営業部 部長)
2014年8月にマルケト ジャパンで3人目のメンバー兼 日本初のインサイドセールスとして社内オペレーション構築や社外に向けての情報発信・マーケター向けイベント主催に従事。 「お客様に最高の学習・検討体験を提供する」マルケトのインサイドセールスの仕組みの基礎を作った後に営業へ。現在はコマーシャル市場の営業責任者として従事。セッションでは、少人数精鋭の企業としての立ち位置から、自社の取り組みを紹介した。
茂野:インサイドセールスではどんどん情報収集が進んでいく。マーケやフィールドセールスと同じ指標をもったり、全体を俯瞰して行動するのがインサイドセールスということですね。では、次の質問です。
商談数以外に、KPIにはどんなものを設定していますか?
セールスフォースの鈴木さんは8年の経験がおありなので、KPIの指標が変わってきた歴史をご存知だと思うのですが。
鈴木:私が入社した8年前はアポ数だけがKPIでした。次にアポ数と契約金額。その後コール数、コネクト件数も加わりました。現在は、営業が訪問した後「有効と認めた商談数」と「新規獲得件数」という質のKPIにシフトしています。
茂野:きっとみなさん共通ですよね。最初はアポ数、それから商談化数、そして単なる商談だけではなく質にこだわっていき、最終的には売り上げだけを営業とともに追っていくわけですよね。では、マーケ施策へのフィードバックや商談化できなかったリード(見込み顧客)の分析は、どの部門がやっているのでしょうか。
弘中:定量的な情報や業界情報、重要因子の影響などの分析はマーケティング部門がやります。営業部門でやっているのは定性的なものです。まだ組織が小さいので、営業部門で商談化しなかった理由ややりとり内容を全部聞いて、2週間に1回マーケティングの責任者と擦り合わせています。