破壊的イノベーションに関する2つの誤解
イノベーションは「技術革新」とも訳されるように、技術に関する2つの大きな誤解があります。
一つ目の誤解は、先端技術によってのみイノベーションを興すことができる、というものです。iPadやGoProの例から見ても、「ハイテクがイノベーションの本質ではないこと」が分かります。一般的なデジタルカメラのスペックではありながら、用途に合わせ小型軽量にパッケージしたことがGoProの技術的な特徴です。特に、ローエンド型の破壊的イノベーションでは「安かろう、悪かろう」という技術が席巻することになります。破壊的イノベーションにはハイテクどころかローテクがカギになるのです。
二つ目の誤解は、イノベーションに時間とお金がかかるのは技術開発のためである、というものです。GoProは最近よく店頭で見かけるようになり、IPOが発表されたばかりなので急に成長したような気がしますが、実は10年前に最初の製品を発売しています。設立は2002年なので、製品化まで約2年。つまり、製品化してから多くの人がその価値を認識するようになるのに、技術開発の5倍もの時間をかけています。現在は約10億ドル(約1000億円)の売上と年率80%強の成長率を誇りますが、価値が認識されるまでのこの10年間、用途の発見や開発、プロモーションを重ねてきた結果、ようやくイノベーションとして認識されるようになりました。
中期経営計画にはイノベーションが語られているが…
イノベーションには時間がかかることは、十分に理解されています。そのため企業は中期経営計画、つまり中計を立て、予算配分を戦略的に行うようにします。短期的な景気にあまり左右されず、しっかりと長期的な取り組みをするべく中計が経営に組み込まれています。
ところが、破壊的イノベーションの原則から考えると不十分な点がいくつかあります。
- 長期的な取り組みが主に研究部門のものとして扱われる
- 持続的イノベーションへの予算が破壊的イノベーションの予算より優先される
- 不連続な未来を記述しきれない
- 現時点で小さな市場は無視される
前述したように、イノベーションに投資するのなら、「市場創造」「顧客開発」に十分な予算を配分すべきです。また、既存市場をターゲットにした持続的イノベーションはロードマップ化しやすいですが、破壊的イノベーションのような不確実性の高いものは中計に描けない状態になっています。