AIがもたらすものは「予測」コストの低下である
アグラワル氏は講演の冒頭、「多くの人が、『今のAIは1995年にインターネットに感じたものと似ている』と言っています」と切り出した。インターネットはそれ以前にもあったが、1995年にWindows95が誕生し、96年頃から爆発的な飛躍を見せたのだ。その時には多くの人がインターネットを「新しい技術」ではなく、インターネットによって「新しい経済」が生まれると話し始めていた。今のAIと非常に似た状況である。
新しい技術が普及してくる時に起こるのは、「何かのコストが下がる」ということである。インターネットが普及した時に下がったのは「検索」と「通信」のコストだった。それによってデジタルで商品をやりとりするサービスが増えた。半導体という新しい技術が普及した時には「計算」のコストが下がった。
何かの特定のコストが下がると、今までそれを使っていたところが、もっと使うようになるだけでなく、今まで使っていなかったところにも使われるようになる。たとえば半導体の普及によって「計算」のコストが下がった時には、NASAや政府機関等、今まで計算を多用していたところが半導体を使い始め、計算量を増やしただけではなく、例えば今まで化学的な処理を行なっていた写真を、半導体を使って計算で行うものにするという変化が起こった。つまり、デジタル化したのだ。写真がデジタル化しただけではない、銀行業界も、音楽業界も同様の発想で「計算」を多用するようになってデジタル化したとアグラワル氏は主張する。
では、AIが普及すると下がるのは、なんのコストだろうか。それは、「予測」のコストだという。機械学習によって様々な予測が瞬時に間違いなくできるようになると、「予測」のコストが下がっていく。それが、AIがドローンやロボット、VRとは全く違ったレベルで注目を集める理由である。「予測」のコストが下がると、半導体が計算のコストを下げた時と同様に、さまざまな業界に変化が起きるのだ。
では、その変化とは何なのだろうか?