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d.schoolの教科書は「ジレンマ」ではなく「解」

『イノベーションへの解(原題:innovator’s solution)』

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破壊的イノベーションは、“脅威”ではなく“機会”

 クリステンセンといえば、真っ先に思い浮かぶのは『イノベーションのジレンマ』だろう。名著であることに変わりはないが、もしクリステンセンの本を1冊しか読めないとしたら、今回紹介する『イノベーションへの解』を私は紹介したい。その理由は、「破壊的イノベーションの捉え方」にある。前書『イノベーションのジレンマ』では、「脅威」の観点から優良企業が衰退する現象を解き明かした。一方、本書では破壊的イノベーションを「機会」として捉え、いかにその機会を事業成長に結びつけるかを取り扱っている。

 デザイン思考を学べるスタンフォード大学d.schoolでも、推薦書籍は『イノベーションのジレンマ』ではなく本書『イノベーションへの解』となっている。イノベーションを理解するのではなく、実現させることに重きを置く人であれば有益な示唆を本書から得られるだろう。理論そのものではなく、理論の扱い方をテーマとした本のため、「どうすればこの理論や思考プロセスを現場で活用できるか?」と意識して読みたい。

 そのような意識を持つことが、よりよい意思決定につながっていく。意思決定は意思決定者が持っている知識、経験、感情、習慣などを統合した「直観」によって下される。理論的な枠組みも、直観を構成する要素の1つだ。たとえば、「大学生はお金がない」という枠組みを自分の中に持っていれば「大学生向けに課金するWebサービス」というアイデアを聞いた際に「これはうまくいかない」と半自動的に判断を下す。本書を読むことで、誰もが持っていながら普段は意識されない理論的な枠組みを、より豊かに発展させることができる。

 本書では、9つの意思決定状況においてどのような理論を活用するべきかが言及されている。今回の記事では、1)状況に応じて理論を活用することの重要性2)イノベーション実現に必須の顧客ニーズを表現した「顧客の用事」3)顧客の用事への対応状況によって異なる破壊的イノベーションの種類(「ローエンド型破壊」「新市場型破壊」)を紹介していきたい。

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この記事の著者

柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

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