異業種からの破壊的イノベーションに備える「機能的な目的」と「市場」の洗い出し
WHITEでは、新規事業の問いや提供価値を定義するために、1.把握する、2.抽象化する、3.構造化する、4.言語化する、という4つのプロセスで検討します。未来視点で考える場合も、基本的には同じプロセスで進めているため本稿も4つのプロセスにより説明していきます。
最初に取り組むのは「把握する」のプロセスです。文字通り「新規事業を検討する市場(以下、検討市場)」をデスクリサーチで把握していきます。産業の壁を超えた競争をテクノロジーがあらゆるところに創り出している現在において、「把握する」難易度はどんどん高まっています。検討市場のみをリサーチしても、そもそも「問いが枯渇」しているために「既に先行企業が存在している」「ニッチなため一定規模以上の利益を創出できない」など、新規事業で取り扱うべき課題につながらないことがほとんどです。
新規事業として取り扱うべき課題につなげるためには、顧客目的を起点に、
- 機能的な目的=製品・サービスを利用して、どのような直接的効果を得たいのか?
- 意味的な目的=製品・サービスを利用して、なぜそのような効果を得たいのか?
という軸で検討市場を再構築して「把握する」必要があります。
1-1. 機能的な目的と市場を洗い出す
まず、検討市場における代表的な製品・サービスをいくつかピックアップして「顧客が期待している直接的な効果は何か?」を検討していきます。自分自身の考えではなく顧客になりきって「製品・サービスをなぜ購入するのか?」「利用し続けている理由は何か?」などを考えましょう。ひとつの製品・サービスに対して機能的な目的はひとつではありません。利用しているシーンを具体的に想像しながら、解釈を拡げて少しでも多くの目的を考えていきましょう。
機能的な目的を把握できたら、目的達成のために検討しうる別の市場・製品・サービスを具体的に考えます。別市場の洗い出しは、産業の壁を超えて競争が起きている現在では非常に重要です。例えば、化粧品を購入する顧客の機能的な目的が「肌をきれいに保ちたい」であれば、化粧品以外にも、食事や睡眠の質を高める、フィットネスで適度な運動をする、ストレスを感じる仕事を変える、再生医療、など数多くの市場が洗い出されます。テクノロジーの発達により、感覚的な「肌に対する効果」が定量的に評価・比較できるようになると、化粧品とフィットネスなどの異なる市場が直接的な競争関係になる可能性が高くなるというわけです。