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投資家思考とは何か

リバネス丸氏と投資家蛯原氏が注目するディープテック──日本が抱える3つの課題をグローバルなビジネスに

ゲスト:株式会社リバネス 代表取締役 グループCEO 丸幸弘氏【前編】

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 2019年8月に刊行した『テクノロジー思考 技術の価値を理解するための「現代の教養」』(ダイヤモンド社)が好評な、蛯原健氏による対談シリーズ。今回は大企業の新規事業開発、スタートアップの創業支援、次世代の教育などを幅広く手掛ける株式会社リバネスの代表取締役 グループCEO 丸幸弘氏をゲストに迎えた。  丸氏は近著『ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」』(尾原和啓氏との共著 日経BP・刊)で、東南アジアで花開いているディープテックと、そこで日本企業が果たす役割の可能性について解説している。共に注目する東南アジアのスタートアップの話から、日本が抱える「根深い課題(ディープイシュー)」とその解決の糸口についてまで、両氏の対話を前後編でお伝えする。

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テクノロジーが新しい市場や世界観を作り出している東南アジア

蛯原健氏(リブライトパートナーズ 代表取締役、以下 敬称略):丸さん、今日はよろしくお願いします。

丸幸弘氏(株式会社リバネス 代表取締役 グループCEO、以下敬称略):よろしくお願いします。『テクノロジー思考』、読ませていただきました。僕の本とメッセージが共通しているというか、兄弟なんではないかと思ってしまったぐらいに、課題意識が近いなと思いました。

蛯原:お互いに近しい活動をしていますからね。丸さんがアジアのスタートアップ企業に注目したのはいつ頃ですか?

丸:シンガポールに会社を作って事業を始めたのが2010年ですが、リバネスの活動の合間に個人的なエンジェル投資やリアルテックファンドでのベンチャー・キャピタルとして活動するようになったのはもっと後ですね。リー・クアンユーが亡くなった2015年、ドナルド・トランプの登場やブレグジットの行方が話題になった2016年あたりから、「アジアが動き始めている」と感じたんですよね。

 実際、その頃にシンガポールに行くとタクシーではなくGrabが一般的になっていて、フィリピンでは日本人の駐在員向けに商売をしていたレンタカー屋が潰れていったんですよ。彼らはレンタカー屋がダメになったら、今度は日本人向けのラーメン屋やたこ焼き屋を始めて成功していたりするのが面白いところですが(笑)。

蛯原:インドネシアもジャカルタに本社を置くスタートアップでライドシェアと物流に注力する「GOJEK*1」が出てきて移動が楽になりました。タクシーに乗っていた頃は言葉が通じなくて目的地にたどり着けなかったり、ちゃんとメーターを見ておかないとぼったくられたりしましたからね。アプリで車を呼べば確実に目的地に行けるというのは革命的です。

丸:東南アジアは今まさに、テクノロジーが新しいマーケットや世界観を作り出しているところですね。

蛯原:東南アジアでは、アクセラレーションと投資をされているんですか?

丸:そうですね。日本を含め「テックプランター*2」というアクセラレーションをやっていて、東南アジアだけでも毎年200くらいのスタートアップが生まれているので、その中で面白いところに少額の投資をし、育成しています。

 リバネスの基本的な事業は、我々の「知識プラットフォーム」を主に大企業をはじめ、大学、ベンチャー、中小企業、町工場、政府に提供して役立ててもらうことです。その一環で、新規事業の育成プログラムを開発したり、大学からライセンスを持ってきたり、知財をグローバルで取得したりというファンクションを持っているので、僕らが支援するシード期のスタートアップにはそれらを無料で提供するんです。

 東南アジアでは国が大学発のベンチャーを作る予算を持っているので、僕らは各国の政府と組んで育成プログラムを提供しています。インキュベーションやアクセラレーションのプロとしてやっていくというよりは、もう一階層、別のレベルのエコシステムを作って社会を底上げしていくということをやっているので、半分ボランティアみたいなものですよ。

 リバネスというのはLeave a Nest、つまり「巣立つ」という意味です。僕らが鳥の巣とも言うべきプラットフォームの部分を作ることで、スタートアップが創業しやすい状態や投資が進みやすい仕組みを作り、いろいろな人の巣立ちを応援したい。すごくユニークで儲からないポジションをやっているのは、そういう思いがあるからなんです。

蛯原:素晴らしい!

丸幸弘株式会社リバネス 代表取締役 グループCEO 丸 幸弘氏

*1 GOJEK

*2 テックプランター:リバネスによる、起業前の個人・ベンチャー企業を対象とした、リアルテック領域の事業シーズを発掘・育成する取り組み。

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