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社会人が大学院で研究する意味 (AD)

なぜ都市と企業は「依存」と「らしさの喪失」に陥るのか──社会人が研究で得る「考える力による差異」とは

ゲスト:埼玉大学経済経営系大学院 教授 朴英元氏、准教授 内田 奈芳美氏

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都市と企業に共通する課題は「コンサル依存」と「均質化」

宇田川:都市が「らしさ」を取り戻すためにどんなことが必要なのでしょうか。

内田:自分たちで考えることが必要ですよね。東京のコンサルタントに頼るのは、均質化の第一歩です。お金のあるところほどコンサルタントに依頼して、すでに行われているようなイベントをやりがちです。私は金沢市を研究対象にしていますが、金沢では地元の人々が自分たちで個性を考えようとしているんです。

宇田川:近隣の都市に比べて、金沢は「金沢らしさ」がはっきりしていますよね。何がそう思わせるのかはわからないですが、ちゃんとコミュニティが機能しているように感じます。

内田:金沢の近隣都市は戦災に遭っていますから、そこが違うのでしょう。日本の地方都市は金沢などの一部をのぞいて戦災復興事業で道をまっすぐにしてしまっているんです。都市の活力は過去の積み重ねが現在にも影響するという「経路依存性」があると言われていて、金沢はそういう意味でも都市として恵まれているので、近隣都市とは単純に比較しきれません。とはいえ、都市の空間だけでなく人間の営み自体がオーセンティシティを作るという論もありますので、そのオリジナルな営みをちゃんと見える化できるかどうかが重要ですね。

宇田川:学会で青森に行ったのですが、コンパクトシティ構想の先進地として駅前にAUGAという商業施設を作ったものの、倒産してしまったんですよね。

内田:AUGAは現在、青森市の市庁舎になっています。コンパクトシティの難しさは、物理的なコンパクトさと営みがコンパクトになることが連動しない点にあるんです。富山市も物理的なコンパクトシティ構想はきちんとなされているのですが、みんなが移動可能な自動車を所有しているし、周辺都市が大型スーパーやアウトレット等を誘致しているので営み自体はなかなかコンパクトにならない。でも、これから高齢化していくことを考えると、近隣だけで生活できることは非常に重要です。青森や富山も、都市政策の成否は短期的には分析できない部分もありますね。

 未来予測はさまざまな変動要素があって難しいものですが、人口予測だけはほとんど当たるんですよね。その変化に対して都市がどうあるべきかを考えていくのは非常に重要で、その際に大事なのは自分の足でデータを稼ぎ、疑問を持って自分の目で見ることだと思います。

タイトル

宇田川:僕は都市研究者ではないけれど、学会などでどこかに出かけたときには、なるべく歩いてみるようにしているんです。そうすると、何か感じ取れるものがありますよね。

内田:そうなんです。そこで感じ取れたものの中身が一体何か、何の評価軸で捉えたのかを考えることが大事です。わかりにくいものをどう捉えるかは非常に知的な訓練が必要なことだと思いますが。

宇田川:捉えたことをもとに、必然性がある取り組みを行なうことも必要ですよね。前述した平田オリザさんとの対談で話題として挙がったのですが、平田さんが移住した兵庫県豊岡市には城崎温泉があります。そこが有名になったのは志賀直哉の『城の崎にて』ですが、志賀直哉は単に城崎温泉に逗留していただけなんですよね。平田さんによれば、あれはタダで泊まらせてやるから作品を創ってくれという、今でいうとアーティスト・イン・レジデンスだったそうなんです。それで100年やってこれたから、今また城崎国際アートセンターでアーティスト・イン・レジデンスをやるのだそうです。こういう発想は、非常に必然性があると感じます。

内田:そうですね。先ほどの経路依存性の話もそうですが、自分たちで由来や歴史、持っているものを考えることと、取り組みが自然発生的に生まれていることは非常に大事ですね。場所としての骨格がすでにある中で、無理して必然性のないことをやってもやっぱり根付かないんですよ。

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ベスト・プラクティスによる日本企業の“らしさの喪失”

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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